往年の老舗「キャバレー」が再び脚光! 2代目オーナー夫妻が挑む起死回生ストーリー 《大阪・十三》 映画『国宝』のロケ地でも話題に
その矢先、思わぬ出来事が起きた。泰三さんの身体に腫瘍が見つかり、摘出手術のため数カ月間の入院を余儀なくされたのだ。
結果、マリアさんは入社間もないながらも、泰三氏からの電話やメールでの指示を頼りに、貸会場事業の全てを一人で切り盛りするようになった。力を合わせてピンチを乗り越えることで、やがて2人は強い絆で結ばれるようになる。
その後、マリアさんは事務職から秘書に転身。2人は2024年に入籍し、泰三さんの病気はほぼ完治した。
たくさんの人に利用してもらうために
貸会場事業が順調に拡大する中であるとき、開催予定だったイベントへの高校生の出演に関して警察から「キャバレーの運営会社が貸会場事業を行う限り、未成年者の立ち入りは禁止」という指導が入った。
今後も若い世代に会場を利用してもらいたいと考えていた宮田夫妻にとって、これはクリアすべき大きな問題だった。
相談の結果、貸会場運営会社をキャバレー運営から分ければ、18歳未満でも出演や観覧が許されるとわかり、泰三さんは急いで運営会社を立ち上げることを決意。知り合いの弁護士、司法書士、行政書士を呼び、「今から会社を立ち上げるとしたら、どれくらいかかる?」と持ちかけた。
そこから夫妻は会社設立に関する必要な書類を3日で揃え、わずか1カ月半という驚異的なスピードで貸会場専門の新会社「テサム」を設立。高校生たちのイベント出演不可を回避できた。

キャバレーという場所には、いまだ偏った見方がつきまとう。
「地域でのお付き合いを通じて、小中学生の合唱部から発表会を開きたいとお声かけいただいたことがあります。でも、親御さんから反対の声がちらほらあると言われました。界隈では父の功績も含めて信用いただいていますが、他の町の方々から見ると、風俗店でしょっていうイメージが拭えないのでしょう」(泰三さん)
一方で、長年店を支えてきたスタッフたちからは、この場所への強い誇りが伝わってくる。
あるとき貸会場事業でマリアさんが担当した主催者が店内で噴射型のスモークを焚き、店内火災報知器が作動。大音量でジリリッとベルが鳴り響いて騒然としたことがある。このとき3階の本社から社員が慌てて降りてきて、「何十年も守ってきたのに、燃えたらどないするんや!」と真剣に怒られたそうだ。
「キャバレースタッフたちは毎日店の掃除を、何回拭いてるんだろうってくらい丁寧にやっています。毎日ずっとそれを繰り返しているから、今日もお客さんに店を貸せる状態であるのだと痛感しました」(マリアさん)

現在、貸会場事業だけで年商1000万円を超えた。約半年先の週末がほぼ埋まり、キャバレーの定休日の月曜日も定期的に予約が入る。貸会場事業はグランドサロン十三の未来を明るく照らしている。
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