「外観は怪しい、でも中は豪華」、映画『国宝』の撮影地で話題に!《大阪・十三の老舗キャバレー》が人気の背景
そこにグランドサロン十三も掲載してもらえるよう積極的に働きかけたのだ。ちょうどそのタイミングで、映画『国宝』の制作会社から大阪フィルム・カウンシルに「いい撮影場所はないか」という問い合わせがあり、同店が紹介された。
映画『国宝』の撮影は俳優の拘束時間やキャバレーの通常営業への配慮から、わずか1日で集中的に行われたという。夜中に機材を搬入し、早朝にエキストラ、昼前に俳優陣3名が入り、夕方には撤収するという綿密なスケジュールが組まれた。
マリアさんが大ヒットを喜びつつ、こう語った。
「エンドロールには、73歳の元ネオン看板職人が手掛けてくれたグランドサロン十三のロゴも登場して、映画を通じてこの老舗キャバレーの存在が知られたようで嬉しかったです。その方は今も現役で、うちの店の看板やポスターをMacで作ってくれています」

「十三」の認知度向上に一役
その後、会場のレンタルの問い合わせがどんどん増えた。スポーツイベントではキックボクシング興行「SUPER KICK S-1」を初のスポーツ集客イベントとして開催し、「客席の形が古代コロシアムのようだ」と参加者から好評だった。
その他にも、カラオケ大会、ストリートダンスや社交ダンスのイベント、結婚式や同窓会、音楽会など、多岐にわたるイベントに利用されるようになった。
グランドサロン十三の認知度向上は、地域を明るく照らした。現在、泰三さんは地域団体とのコラボレーションにも力を入れているという。
例えば、地域のアートを活用したまちおこしNPO法人「淀川アートネット」と連携し、十三の飲食店や施設で絵画展、写真展などの開催を支援。十三を歓楽街だけでなく、若いアーティストを育てる拠点にしようとしている。
地域住民が出入りするようになって、泰三さんは会場の魅力をより感じるようになったという。周りの人たちがグランドサロンの魅力に気づき、地元での評価が高まったからだろう。
「(地域の人から)『怪しい外観の建物の中がこんな豪華なんて思わなかった』っていう、最初に僕が父から案内されたときと、まったく同じ感想を言われるんです。それはそうですね。飲む人しか知らないですし、先代は宣伝もしなかったし、取材を受けない人でしたから」
最近ではテレビ番組やYouTubeチャンネルで十三の町を紹介する特集が組まれることが増えた。また、阪急阪神不動産がタワーマンションを建設し、阪急電鉄が新路線の計画を打ち出すなど、十三の注目度は上がっている。そのきっかけの一つに、グランドサロン十三も貢献しているのだろう。
「イベントの出演者さんも、観覧に来られる方もすごく笑顔で帰っていただきます。独特の雰囲気や、客席の形が新鮮なんでしょうね」(泰三さん)
今ではほとんど聞くことがなくなった“キャバレー”。このユニークな存在が地域の象徴となり、街全体の認知度向上に貢献しているのだ。昭和の文化を未来へと繋ぐ「空間資産」として、グランドサロン十三は今、令和の時代に新たな輝きを放っている。
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