【産業天気図・家電/AV】薄型テレビは供給拡大による価格急落懸念あり後半「曇り」。ソニーの業績浮上に注目

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2008年3月期の家電・AV業界は薄型テレビを筆頭に堅調で前半は「晴れ」。ただ、後半にかけ競争激化の懸念があり後半は「曇り」と見ている。
 注目度が高い薄型テレビは、北米、欧州をはじめとした海外を中心に需要拡大が続いており、各社とも販売台数は大きく伸長しそうだ。ただ、ソニー<6758.東証>と韓国サムスン電子の液晶パネル合弁会社S−LCDが新しい製造ラインを今秋稼働させるほか、同時期にシャープ<6753.東証>の亀山第2工場も増産を控えるなど、供給量も急拡大するため、業界最大の需要期である年末商戦へ向けて競争激化は必至だ。特に40インチ以上の大画面サイズでの急激な価格下落が、大きな懸念材料となるだろう。
 個別企業に目を移すと、回復が鮮明になってきているのがソニー。今期の予想営業利益4400億円は前期比6倍と、急伸する見込みだ。牽引するのは主力のエレクトロニクス事業で、前期のリチウムイオン電池の回収・交換費用512億円が消えるほか、液晶テレビの販売好調によるテレビの黒字化が寄与。また前期2323億円の巨額赤字を計上したゲーム事業も、プレイステーション3(PS3)ビジネスの本格的な普及で、営業赤字幅は500~600億円まで採算改善が進みそう。今期は全社営業利益率5%、エレクトロニクス営業利益4%(両方とも構造改革費用等除く)を掲げた中期経営計画の最終年度に当たるが、後者はすでに1年前倒しで達成しており、前者の達成も見えてきている。
 松下電器産業<6752.東証>、シャープは、今期も安定的に成長しそうだ。松下はプラズマテレビをはじめとしたAV事業が収益を牽引。そのほかにも白モノ家電やデバイスなどできっちり稼ぎ、営業利益5000億円の大台に乗せる見込み。シャープも液晶テレビ増産投資などによる償却負担増で利益の伸びは鈍化するものの、過去最高営業益を更新する高い水準だ。
 一方、経営再建中の三洋電機<6764.東証>、日本ビクター<6792.東証>はトップ交代で浮上を試みるが、まだまだ予断を許さない。三洋は前期、リストラ効果等で2期ぶりに営業利益黒字化を果たしたが、今期はコバルトなどの原材料高に伴う電池事業の採算低下などで営業減益となりそう。半導体、携帯電話などの事業再編、過年度の不適切な会計処理への対応など問題は山積みだ。
 ビクターも環境は厳しい。主力のテレビ事業は今期も大手メーカーとの競争にさらされ、今期も不振からの脱却は難しそうだ。収益浮上に向け、単体で1800人の人員削減を柱としたリストラに踏み切るが、同社不振の根っこにあるのはビデオカメラとカーオーディオ以外に稼げる製品がないということ。13年ぶりの生え抜き社長となる佐藤国彦氏はマーケティング強化の方針を打ち出しているが、具体的な方策は見えない。
【中島順一郎記者】

(株)東洋経済新報社 四季報オンライン編集部

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