フランスに社会党政権が誕生なら、金融市場でユーロ危機再燃も--ドイツ有力経済人に聞く
ユーロの先行きを占ううえで大きなカギを握るフランスの大統領選挙。同国の世論調査ではサルコジ現大統領の苦戦が伝えられている。同大統領はメルケル独首相とともに、ギリシャをはじめ財政危機に直面した国々の支援体制構築で主導的な役割を果たしてきた。それだけに、落選で「メルコジ」と称される両首脳の“蜜月関係”が損なわれるようだと、金融市場が大きく動揺する可能性もある。
4月22日の大統領選第1回投票を前に、独経済界で大きな発言力を有し、メルケル首相との関係も近いとされる欧州系最大のコンサルティング会社、独ローランド・ベルガーの創業者・ローランド・ベルガー氏に仏大統領選後のユーロ情勢などを聞いた。
--フランスの大統領選では社会党のオランド候補の優勢が伝えられています。
3月13日に仏有力紙ル・モンド主催のイベントにゲストとして出席した。そこには大統領選に出馬しているオランド、ル・ペン、バイル各氏とサルコジ大統領の計4人の候補も来ていた。私はドイツの経済改革の例や、その成果などについてスピーチを行った。
フランスの聴衆の多くは同国にも福祉政策や年金制度等の面で痛みを伴う改革が必要なこと、より自由化された労働市場が求められていることなどを理解していると感じた。
ただ、その考え方はすべてのフランス人に共通したものではないとも思う。そうした中で、「ポピュリスト」である社会党候補のオランド氏は福祉の向上などを公約として掲げている。個人的な考えとしては、そうしたマニフェストは選挙運動向けにすぎないと思う。仮に当選しても、そうした公約を実行に移すことはできないだろう。
ドイツにおける経済、社会、労働市場などの改革は(社会主義政党である)社会民主党のリーダーの手で成し遂げられた。現在の独社会民主党のリーダーはオランド氏との意見交換で、もう少し現実を直視するよう説得を試みた。欧州の社会主義政党や政治家は、フランスで極左の政策がとられることを決して望んでいないと思う。
ただ、オランド氏がフランスの大統領に就任すればまず、英国、チェコを除く欧州連合(EU)25カ国が調印した財政規律強化を目的とする協定に反対の意思表示をするだろう。欧州の現状を踏まえると、最終的にはもう少し現実的なアプローチに戻るとは思うが、それでも向こう6~9カ月間は金融市場が著しく不安定な状況に陥るだろう。それだけに、仏大統領選は欧州の安定を脅かす要因になりうる。