中原:非常に問題であると思うのは、欧州が合法的にGDPをカサ上げしているのに対して、中国は明らかに粉飾しているということです。中国のGDP統計は政府目標を達成したという既成事実をつくるための儀式にすぎないと割り切る必要がありますね。
中国経済の動向を精緻に分析している香港のエコノミストなどは、その多くが中国のGDP統計をまったく信用していません。政府目標に合わせたようなGDPの数値より、個々の産業統計のほうが経済の実態を映し出しているからです。
中国が財政出動できない理由
三井:本当の中国の成長率をどのくらいだとお考えでしょうか。
中原:2013年当時は5%程度、2015年の7-9月期は5%程度はおろか、3%程度しか成長していなかったと分析しています。
おそらく、それでも中国政府は2015年通年の数字を6.8%~7%の範囲で数字をつくってくるでしょうね。中国は「格差拡大を止めるには7%前後の成長が必要である」と民衆に説明している手前、本当の数字を出したら民衆の大規模な暴動が止められなくなることを恐れているのです。
三井:中国への財政出動を望む声が高まっています。
中原:中国が財政出動により景気刺激策を行うのは非常に難しいといえるでしょう。財政出動の無駄を自覚していると同時に、財政出動を避けたい明確な理由があるからです。だからこそ、粘り強い金融緩和と労働者の賃金引き上げに頼るしかないのが、今の中国経済の現状なのです。
ところがいまや、金融緩和で生まれた株価バブルは、崩壊したといっても言い過ぎではない状況にありますし、地方政府による大幅な賃金引き上げは、中国の製造業から競争力を奪い、かえって多くの失業者を生じさせてしまいました。
2014年以降、景気が減速しているにもかかわらず、今なお賃金が大きく上昇している背景には、格差の拡大が社会問題として無視できないということがあります。習近平体制が格差是正に真摯に取り組んでいる姿勢を、不満を持っている多くの国民に見せなければならないからです。
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