沖縄尚学・悲願の夏優勝 沖縄県勢が「参加したくてもできなかった‥」歴史と抱えてきた不平等。県民が甲子園に一丸となる「深い事情」

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これらの応援曲のほかにも、沖縄代表の試合のムードを盛り上げるのが、指笛の音色だ。指笛の良く通る音色は、選手への応援という意味もあれば、観客が観客に向けた“仲間同士ののろし”のような気持ちにもなる。「ここに指笛で応援している人がいるよ」ということがわかるだけで、選手にも観客にも一気に地元っぽい安心感を与えることができるはずだ。応援の効果は大きいと感じる。

“カチャーシー”で喜びを分かち合う沖縄県民

阪神甲子園球場
優勝を決めた直後インタビューに答える沖縄尚学・比嘉公也監督を大きく映し出した阪神甲子園球場のバックスクリーン(宮城良典さん撮影・提供)

このようにして、まさに「沖縄県民は音楽を力に変えてきている」と実感できる場でもある甲子園。音楽だけではなく、踊りもそうだ。うれしいときやめでたいときに湧き出る手踊り・カチャーシー。

決勝戦の試合時間とかち合ってしまった地元テレビの生バラエティ番組では、ニュース速報のテロップで「夏の甲子園 沖縄尚学が初優勝」と報じられると、番組の流れを断ち切ってカチャーシーをする出演者の姿もあった。各地のパブリックビューイングの場でも、カチャーシーを踊る人々の姿。

筆者の思う“三大カチャーシータイミング”はこれだ。①結婚式の最後②選挙で勝ったとき③甲子園で優勝したとき――。いずれもみんなで踊るから喜びを共有できる。

「みんなで喜べる」というのは、まさにスポーツの魅力だ。話題は変わるが、その一体感は、夫婦仲の修復にも効いた例すらある。筆者の友人は妻との関係が冷え切っていたが、勝ち進む沖縄尚学の応援に熱が入って妻が高校野球に興味を持った結果、9月に沖縄県で行われるU-18 野球ワールドカップの観戦デートに行くようだ。沖縄尚学の優勝は、一組の夫婦をおそらく救った。

そのワールドカップには沖縄尚学からも末吉投手が選出されている。今大会でしっかりにわかファンになった私もワールドカップの観戦に行こうと思うが、もし友人夫婦を見かけてもそっとしておこうと心に決めている。全国制覇を目指したすべての高校球児のみなさん、お疲れさまでした。そして、ありがとうございました!

【前編はこちら】『甲子園優勝で沖縄の道路ガラガラに?「テレビをつけて応援する職場」に「イオンでの大熱狂」“一致団結の大フィーバー”を沖縄記者が解説

【写真を見る】母校で優勝報告を行う沖縄尚学高校野球部のメンバー 
長濱 良起 フリーランス記者

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ながはま よしき / Yoshiki Nagahama

フリーランス記者。得意ジャンルは音楽・経済。沖縄県出身・在住。
元琉球新報記者。フリー転向後も新聞や雑誌、書籍、ウェブ媒体などでの記事執筆を続け、これまでの取材執筆本数は約2000本。海外メディアの日本国内取材コーディネーターとしても活動。旅と音楽が好きで、訪問国数40ヵ国超。1986年生まれ。

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