パート主婦が消える? パート労働者への社会保険適用拡大の是非
図のように、今回の適用拡大で負担増となるのは、主に大企業の会社員らが加入する健保組合のみでその額は400億円。逆に、中小企業の会社員らが加入する全国健康保険協会(協会けんぽ)や、公務員が加入する共済は、負担が軽くなる。公費負担も約400億円軽減される。
これは、パート労働者の所属する医療保険が、国保や中小企業健保から、今回適用対象となる大企業の健保に変わり、人数割りでかかる高齢者医療制度などへの支援金の負担が増すことが響いている。
負担増加分の財源を捻出するには、保険料率を引き上げるしかない。健康保険組合連合会加盟の健保組合約1470の保険料率は、平均で7.926%(11年度予算)。医療費支出は賃金の多寡にかかわらず生じるが、保険料収入は賃金水準に比例するので、低賃金の人が多いと、保険財政は苦しくなる。つまり、比較的所得の低いパート労働者が健保組合に入ってくることは、所得の高い正社員がパート労働者の保険料負担を事実上肩代わりすることを意味している。
さらに法案では、「3年以内に対象を拡大する」ことが明記された。議論の過程では、年収94万円未満や500人以下の企業に対象を広げるケースも検討されており、370万人全員を対象にした場合、健保組合は1000億円、協会けんぽも600億円の負担増となる。健保組合と比べて保険料率が10%と相対的に高く、財政も脆弱な協会けんぽに深刻な影響を与えるおそれがある。
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