中国人「爆買い」はなぜ消えた? 今求められる新たなインバウンド戦略。中国人“富裕層”ヴィトン爆買いに浮かれたツケとは
この時期中国に住んでいた筆者は、一時帰国して日本の店舗を回ったとき、あらゆるものが「元換算で」激安だと感じた。2023年の為替相場は2015年と同程度の円安になっていた。
中国は水際対策の緩和が他国より遅く、団体旅行も2023年8月まで解禁されなかった。日中を結ぶフライトが限られていたことから航空券も高止まりしており、同年の日本のインバウンドは、「中国以外は大幅回復」と説明されることが多かった。
しかし海外の高級ブランドの経営層は同じころ、中国人旅行者が日本市場の売り上げに寄与しているとしばしば発言していた。
ケリング傘下ブランドのグッチは2023年4~6月に売上高が2ケタ減の大不振だったが、日本市場だけ7%伸びていた。
ルイ・ヴィトンやティファニーを展開するLVMHの同期の売上高は、北米市場が前年同期比1%減少した一方、日本は同31%上昇した。LVMHのCFOは「中国人旅行者の消費は日本で急回復しており、コロナ前の2019年の水準に近づいている」と語っていた。
CFOの発言直後、中国のSNSで「中国人のおかげで日本のヴィトンが大繁盛」というハッシュタグがトレンド入りし、同じ商品の日中価格差が広く知られるようになった。
同年夏に東京電力福島第一原子力発電所が処理水を海洋放出したことで、中国人の訪日旅行は急ブレーキがかかったが、高級ブランドの日本市場の売り上げは相変わらず好調だった。
「中国人の訪日旅行は冷え込んでいる」という報道の陰で、SNSに投稿せず、周囲の人に言わずにひっそり日本を訪問し、ブランド品を買いまくっている人が相当数いることを示唆していた。
「旅行代の元も取れる」
中国人の高額品買いがより加速したのが2024年春だ。円はさらに下落して1元22円台をつけ、高級ブランドのバッグを日本の免税店で買うと、中国で買うより3割前後安くなった。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら