しかし、現在の日銀や多くのマクロ経済学者が、金融緩和を続ける理由は、インフレ期待が2%でアンカーされないから、というものだ。
私に言わせれば、この考えが一昔前の常識になったにもかかわらず、それに固執していることが、日銀の金融政策の根本的な誤りを修正できない理由だ。異次元緩和に否定的になった今も、インフレ期待を2%で安定させることに固執しているから、過度の金融緩和を修正できないのだ。
コスト上昇によるインフレは一時的であり、例えばコメの価格が落ち着けば、原油が値下がりしてガソリンが安くなれば、インフレは収まるのだから、現在のコスト高によるインフレは、インフレ期待を長期的に2%で安定させることにはならない。だから、もう少し待つ、ということだ。
日銀やマクロ経済学者が犯している「二重の間違い」
しかし、これは二重の意味で間違っている。
まず第1に、そうであれば、インフレ期待と現在の過度の金融緩和は無関係ということになる。これまでの大規模緩和でも需要が過熱しなかったのだから、さらに需要を強くして需要が強くなることによるインフレ期待を高めるという効果は望めないことになる。
だから、少なくとも今の金融緩和はノーメリット、やっている意味がないことになる。むしろ過度の円安を起こし、輸入インフレ(コスト上昇)による実質可処分所得の減少で需要を弱めていることになる。
第2に、インフレが起きているのはコスト上昇によるもので、人々のインフレ懸念が高まっていることにより、将来のインフレ懸念も高まる。
日銀による個人を対象とした「生活意識に関するアンケート調査」によれば、国民の平均的な予想インフレ率は1年後インフレ率が12.8%、5年後が9.9%である。
日銀関係者などによれば「デフレ時代ですらこの数字はプラスであり、普段でも4%ぐらいだから、あまりあてにならない」ということだが、それなら、インフレ予想とは何なのか?期待インフレ率をアンカーするというというのは何のために行うのか?国債投資家がブレークイーブンインフレ率を2%と認識することが目的なのか?そういうことは、実体経済とほぼ無関係だ。
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