恐竜は追ってこなかったが…「ジャングリア沖縄」開業1カ月。沖縄記者の台湾インバウンドへの影響の考察と、「刀」に対する“率直な本音”

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

その一方で、せっかく誕生したジャングリア沖縄への思いは複雑で、一抹の期待も示している。「評判が底を打ったという意味では、ここから上げていくしかないですよね。ネガティブなことばかり言ってもしょうがない。『最初だししょうがない』と気持ちを切り替えていきましょう」と自分に言い聞かせるように話す。

反対に、沖縄県内からの来場者からは肯定的な意見もあった。仕事仲間と一緒に訪れたという40代前半の女性は「アトラクションに攻めたものが多く、ストーリーも組み立てられていて斬新に感じました。ショップのお土産には沖縄企業とコラボしたものも多くデザインもかわいかったです」と楽しんだ。「内地(沖縄県外)でかなりプロモーションを打っていたらしいので、CGとの落差にがっかりしている人も多いと聞きましたが、私はそれを見ていなかったので普通に楽しめました」と、良い意味で“期待外れ”を避けることができた。

ジャングリア沖縄のショップ
ジャングリア沖縄のショップ。衣類や日用品、お菓子類など多彩なラインナップでお土産選びが楽しい(筆者撮影)

口コミ文化の台湾、ジャングリア沖縄への反応は?

初動の酷評の多さが、インバウンド、特に台湾からの観光客を遠ざけたのは痛い。

沖縄にとって台湾は「めちゃくちゃ隣国」だ。九州に行くより近い。沖縄から一番近い100万都市も原発もサイゼリヤも、台湾にある。逆に言うと、台湾から沖縄も近い。なにしろ近いのだ。沖縄の観光地で台湾の人と出会わないことはほぼない。先日沖縄で会った台湾人女性は「3カ月に1回は沖縄に来ている」と言っていた。

というのも、台北市や新北市といった台湾北部の都市圏に住む人は、家族みんなで台湾南部の観光地に時間をかけて行くよりも、近くの台湾桃園国際空港からそのまま沖縄に向けて飛行機でひとっ飛びした方が楽だし安いというのである。

赤ちゃん恐竜
ジャングリア沖縄のアトラクション「ファインディング ダイナソーズ」の一幕。赤ちゃん恐竜もちらほら(筆者撮影)

台湾のある旅行業関係者に、ジャングリア沖縄を訪問しての感想を取材しようとした。その人はこのように言い放っていた。「取材は受けたくありません。本当にひどいテーマパークで、何も話したくありません」。台湾からの顧客を沖縄に送り込む好機として、ジャングリア沖縄が果たせる機能はあったはずだったが「最初からあまり情報をオープンにしていなかった時点で、このような悪い結果になることには薄々感づいていました」と落胆した。

台湾と日本は同じ島国といえども、日本は南北に細長く、北は北海道、南は沖縄まで気候も文化もさまざまであることに比べると、台湾では国内旅行のバリエーションが限られていると考えられ、旅行先として海外を選択するケースも多い。

実際に、日本旅行業協会が2023年に行った調査によると、日本人のパスポート所有率が17%なのに対して、台湾人は約60%。日本人の一般的な感覚よりもはるかに海外旅行が身近な存在である。

次ページ観光イメージに幅を持たせたことに意味がある
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事