原発建設ラッシュの中国、地元から広がる反対の狼煙
長江の岸辺に住む黄春梅さんの家は、玄関を開けるとすぐ目に飛び込んでくるのは、対岸にある建設中の彭沢原子力発電所だ。幅3・2キロメートルの長江を隔てても、原発がハッキリと見える。
「あまりにも近い。時限爆弾が目の前にあるようなものだ。いつ爆発するのか恐ろしい」。黄さんがそう感じ始めたのは、日本で昨年3月11日に起きた東京電力の福島第一原発事故からだ。
昨年3月14日、安徽省安慶市望江県磨盤村の人たちは、テレビのニュース画面にくぎ付けになった。日本の福島第一原発の建屋が、水蒸気爆発した映像が流れたからだ。
その後、中国では放射線予防に塩が効くとのうわさが広がり、塩の買いだめ騒動が起こった。ここ磨盤村でも塩の購入に殺到する村人が出たが、黄さんやその隣人たちにとって、塩の購入だけでは安心できない。目の前にそびえ立つ原発に日々、恐怖を募らせているからだ。
福島第一原発事故以降、磨盤村の様子は一変した。メディアの取材がここ1カ月で急増している。彼らは黄さんたちの「恐怖」をかぎつけたのだ。
地元自治体も同様に脚光を浴び始めた。「中央政府から地方自治体まで、私たち自治体を非常に大事にしてくれる」と、望江県の汪進舟副書記は話す。
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しかし、そもそも原発の建設に際しての事前調査は、ウソのデータで固められているという。域内の人口数、地震の有無、工業団地までの距離、民意を問うアンケートの回答、原発の安全性など、すべてにウソが隠されているというのだ。