原発建設ラッシュの中国、地元から広がる反対の狼煙

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原発建設地の対岸は肥沃な農業エリア

「しまった。罪を犯してしまった」。福島第一原発事故のニュースを見て、磨盤村の韓書記はそう思った。医師の洪さんと激しく口論したことを、いま非常に後悔している。

「原発のある江西省地域には大した産業もないが、こちらの安徽省となると、10キロメートル以内のエリアは農産物が豊富に収穫できる。工業団地も集中しており、人口が多い。長江の水はわれわれの唯一の飲み水だ」と、江進舟副書記が不満をこぼす。

長江では数多くの原発建設が計画されているが、その中で彭沢原発がいちばん進んでおり、これにストップをかけないと、ほかの原発もどんどん進んでしまう。「22基の原発は、順番に国の許可を待っている。その一ひとつは時限爆弾であり、事故が一度でも起こってしまったら、数億人の生命・財産に影響を及ぼす」と方・元裁判長は懸念する。

しかし、原子力発電の専門家は強気だ。「今から原発を造っておかないと、また外国から技術導入しなければならなくなる。かつて毛沢東主席、周恩来総理が迷っていたら、中国は核兵器を持てなかった」と、清華大学原子力および新エネルギー技術研究院の張作義院長は語る。

(『中国経済周刊』3月5日号/郭 芳記者、王 紅茹記者 =週刊東洋経済2012年4月14日号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

写真は泰山原子力発電所 出所:Atomic Energy of Canada Limited
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