スーツケースやマットレス…「生活感のない不自然なごみ」が教える"闇民泊"。新宿で見た《民泊の実態と民泊からのごみ問題》

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このようなごみは適切な指導ができず、ただ回収するしかない。これにかかる処分費用は区民の税金である。

「闇民泊」の兆候

最近新宿区内の古いマンションや団地で頻繁に見受けられるようになっているのが、玄関扉に設置されたキーボックスやダイヤル錠である。

キーボックスは利用者に対して鍵の受け渡しを行っていると考えられ、実際に外国人旅行者が出入りしているところを清掃作業員が収集作業中に目撃したという。

民泊と思われるドア
キーボックス、ダイヤル錠、扉の新聞等の投入口が塞がれているのが特徴(写真:筆者撮影)

調べると区役所に民泊申請はされておらず、「闇民泊」の可能性が高いと考えられる。「闇民泊」であればごみ問題も含め、騒音や宿泊に関して問題が生じても連絡先がわからず、近隣住民は泣き寝入りするしかない。

今後は人口減少に伴って空き家も増加していくだろう。現在の法制度が続く限り、空き家活用策としての民泊も増加すると見込まれる。それに伴い、民泊施設のごみ出しや騒音に悩まされる近隣住民も増え、泣き寝入りして引っ越していくか、地域ぐるみで「民泊NO」を掲げる動きが加速していく。

しかし、現在のところ有効な改善策は見出せていない。事業者は近隣住民に迷惑がかからぬよう、宿泊者にルールを守らせるしかない。宿泊者にルールの徹底ができない事業者には、営業を認めなくするような改善が必要だ。

「闇民泊」については、地域住民の生活環境を守るために阻止していくしかない。ごみ排出の状況から闇民泊の兆候が見られたら、誰でも簡単に通報できる仕組みを考案し、その情報をもとに自治体や警察が一丸となって対策していく仕組みが求められる。

筆者の視察時には、3軒の建て売り住宅のうち2つが民泊施設になっていたのを見た。清掃職員の聞き取りによると、当初はすべて普通の住宅であったが、真ん中の家が民泊施設になったのをきっかけに隣の家も民泊施設になったという。

おそらくマイホームとして購入したものの、隣家が民泊施設となって生活環境が悪化し売却。その家を民泊業者が購入し、事業を展開しているのだろう。

これらの課題を放置したまま民泊が広がっていくことは、地域を衰退させる可能性も秘めている。明日は我が身と思い、自分ごととして民泊問題に向き合っていく必要があろう。

【参考文献】新宿区「新宿区住宅宿泊事業ルールブック」2025年

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藤井 誠一郎 立教大学コミュニティ福祉学部教授

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ふじい せいいちろう / Seiichiro Fujii

1970年生まれ。同志社大学大学院総合政策科学研究科博士後期課程修了。博士(政策科学)。

同志社大学総合政策科学研究科嘱託講師、大東文化大学法学部准教授などを経て現職。専門は地方自治、行政学、行政苦情救済。

著書に『ごみ収集という仕事――清掃車に乗って考えた地方自治』(コモンズ)『ごみ収集とまちづくり――清掃の現場から考える地方自治』 (朝日選書)『ごみ収集の知られざる世界』(ちくま新書)がある。

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