【朝ドラ】やなせたかし、長所に気づくきっかけとなった手塚治虫からの電話とは

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「漫画家は冗談が多い。これは手塚治虫の冗談電話だと思って、すっかり忘れていた」

ところが、後日、虫プロから連絡があり、本当のオファーだったと知って、やなせは驚愕。手塚邸の前にあるアニメーション・スタッフの仕事場へと出かけていくことになった。

キャラクター作りにのめりこんでいく

話を聞けば、仕事は虫プロがはじめて取り組む長篇アニメーションの劇場用作品だという。それもアダルト向け「千夜一夜物語」だときいて、なぜ自分に声がかかったのか、やなせはなおさらわからなくなった。

やなせに任せられたのは、主要人物のキャラクター・デザインである。手塚は鉄腕アトムのイメージが強く、スタッフも子どもアニメのキャラクターに慣れているがゆえに、キャラクターは大人向けの漫画を描く人に依頼しよう、ということになったらしい。人選を重ねた結果、やなせに決まったのだという。

はたして自分でいいのか……という思いを持ちながらも、やなせはたちまち没頭していく。キャラクター・デザインをこんなふうに決めていったのだという。

「主役のアルディンは、フランスの俳優ベルモンドを下敷きにした。奴隷女のミリアムには、ぼくが描き慣れている自分の手持ちキャラクターをもっとアジアっぽく描いた。敵役の大臣の顔は、ぼくが好きだったデヴィッド・ニーヴンをイメージした」

そうしてイメージをあてこんでいく、やなせたかし。色や性質も、キャラクター付けでは重要な要素となる。

「アルディンを太陽の子としてオレンジ系でまとめ、陰謀家の大臣をインディゴブルー系にした。顔の色までブルーである。山賊の頭目をブラックにして、片眼にざっくり傷あとをつけた。その娘のマーディアは火のような性質だから、スカーレット系の赤で統一した」

やなせがキャラクター作りをやってみて実感したのは、たとえ登場シーンが少ない人物でも、キャラクターが決定すると自分で動きだし、重要な役に変化していくということだ。

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