「十条駅前にできたタワマンの一部が廃墟化している」との噂が…。現地を訪れた私が見た光景と、ネットではわからない"意外な真実"

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

原風景としての「タワマン」

十条のタワーマンションを訪れながら、現地の様子をお伝えしてきた。

タワマンがメディアに取り上げられるときは、どうしても、とかく拙速に「良い/悪い」という価値判断的な思考になってしまいがちである。特に近年ではタワマンの部屋を外国人が投機目的で買っていることから、一気にそれが政治マターになりつつある。十条のタワマンでもこうした問題は顔を出していて、それはそれとして考えなければならない問題であることは確かだ。

ただ、そうした思考の外から一歩踏み出してそこで広がる光景を見てみれば、そこには単なる肯定/否定だけでは語れない人々の暮らしがあることも確か。子どもにとってはそこが原風景だし、そこには祭りも根付いていくだろう。そして、今回取り上げた商業施設も、いずれはテナントで埋まり、地域の人に愛されるはずだ(と信じたい)

ニセコ化するニッポン
『ニセコ化するニッポン』(KADOKAWA)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。楽天はこちら

以前、漫画家のかつしかけいたさんにインタビューしたときのこと。かつしかさんは、東東京を中心にそこで暮らす人々の生活をシンプルなタッチで描いている。そんなかつしかさんが日暮里のタワーマンションの話をしてくれた。

かつしか:「さっき、日暮里のタワマンに行ったじゃないですか? そこに広場みたいなスペースがあって、夕方に子どもたちがすごく楽しそうに遊んでいて。それを見た時に、この子たちにとっては、もうこのタワマン前の広場が子ども時代の原風景になるんだな、と思って」

谷頭:「昔でいう空き地ですよね。『ドラえもん』に出てくるような」

かつしか:「この子たちが大人になったら、そのタワマンの風景も懐かしく思うんだろうなと」

結局はそういうものなのだろう。

十条のタワーマンションはこれからもそこに立ち続ける。そしてそれは、人々の生活の「一部」になる。では、それはどのように十条という街を変えていくのか。定点観測を続けていきたい。

谷頭 和希 都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

たにがしら・かずき / Kazuki Tanigashira

都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家。1997年生まれ。早稲田大学文化構想学部卒業、早稲田大学教育学術院国語教育専攻修士課程修了。「ゲンロン 佐々木敦 批評再生塾 第三期」に参加し宇川直宏賞を受賞。「東洋経済オンラインアワード2024」でMVPを受賞。著作に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』 (集英社新書)、『ニセコ化するニッポン』(KADOKAWA)、『ブックオフから考える 「なんとなく」から生まれた文化のインフラ』(青弓社)がある。テレビ・動画出演は『ABEMA Prime』『めざまし8』など。

X:@impro_gashira

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事