どうせやるなら「一国二制度」の確立を--橋下・大阪都構想について
(2)独自の教育
次に大阪都独自の教育の実現である。かつて文部科学省が推し進めたゆとり教育は、教育水準の低下によって国力を減退させたと、筆者は思う。国全体として、最低限の学力や知識を子どもに学ばせる必要はあるだろう。だが、その基礎的な学力を超えた部分については、地方が独自のやり方で、地域の人材育成を行うと同時に、大学教育まで含め、世界で活躍できる人材を輩出するべく、各地方同士で競争することが必要ではないか。
大阪都は、公立大学として、大阪府立大学と大阪市立大学という2つの大学を持つことになる。両校で文科省のさまざまな規制にとらわれることがない新しい大学教育を導入すれば、日本の大学全体に対して大きな刺激を与えるだろう。
世界で第3位の経済大国「日本」の大学は、世界ランキング100位には2大学しか入っていない。トップの東京大学でも30位だ(The Times Higher Education Supplement 2011-12)。日本に進出しようとして、文科省の規制のために、あきらめた海外の大学も多い。筆者がフェローをさせてもらっているカーネギーメロン大学もその1つだ。
大阪都がシンガポールのように海外の大学を誘致すれば、日本全体の大学の水準が向上することにもつながるのではないだろうか。
(3)新しい社会保障・福祉制度
最後に、新しい社会保障制度の設計だ。現在、国政の場で、社会保障と税の一体改革の議論が進められている。社会保障制度の設計は厚生労働省が行っているからだ。また、そのための費用は交付金や補助金によって国が自治体を補助している。しかし、医療、介護、生活保護、子育てなど社会保障サービスの提供自体は、地方自治体が担っている。
そこで、利用者である地域の住民の利便性を向上させるために、福祉、雇用保険の認定・給付、無料職業紹介、職業能力開発などに関する相談業務を一体的に実施し、利用者のさまざまなニーズにきめ細かく応えることが可能になるようにすべきではないか。そのために必要な制度の見直しについて、国も大阪都との協議に応じるべきだろう。
その際、民間企業による社会保障サービスの供給を増やすことなどについて、大阪都において成功した制度があれば、それを他の自治体も採用すればよいだろう。
自治体から大きな波を
橋下氏の人気は、国民の現状に対する閉塞感と将来への漠然とした不安を打破したいという心理の表れに違いないが、まだ具体的な政策については未熟だ。しかし、地方が独立して国のくびきを外せたら、さまざまなアイデアが実現できる。日本全体を変える先進的な政策をどんどん実現するような「大阪都」をつくってほしいものである。
大阪都構想と同じような動きがほかの自治体でも起きている。たとえば、愛知県と名古屋市による「中京都」構想や新潟県と新潟市による「新潟州」構想がある。これらの構想がより大きなレベルで連携できれば、ますます大きな波をつくることができるのではないかと期待している。
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