エリートへの不満を人気取りに使う保守派--イアン・ブルマ 米バード大学教授/ジャーナリスト
支持者たちの偏見を利用するサントラム
民主主義国家というものは、適切に情報を入手している国民なしには機能できない。かつては、国民に情報を届けることがまじめな新聞やテレビ局の役割だった。もちろん、主流派メディアの伝えることすべてがいつでも真実であるわけではない。誤りは起きる。報道機関は、時に自社のオーナーの見解や利益を反映し、政治的なバイアスを抱える。
一方で、質の高いジャーナリズムはつねに誠実さに対する評判に頼ってきた。編集者も記者も少なくとも事実を正しくとらえようとした。だから人々は仏ルモンド紙を、米ニューヨーク・タイムズ紙を、あるいはワシントン・ポスト紙を読む。ナンセンスなことを取り除くのが、これらメディアの義務の一つであり、セールスポイントだった。
だが、大衆主義的な扇動者たちは、左派エリートのプロパガンダを行う組織にすぎないとして、これらの報道機関の信用を傷つけようとしている。サントラム氏は、こうした人々、すなわち、大抵は白人で、地方在住で、非常に宗教心があって、文化的および社会的に保守的で、オバマ大統領とすべての欧州人は危険な無神論社会主義者だと確信している少数派米国民の代弁をしているふりをしている。
サントラム氏が事実面で正しいかどうかは論点ではない。同氏の言うことは正しいと支持者たちには「感じられる」が、それは支持者たちの偏見に合わせているからだ。そして、質の高い報道機関を圧倒したインターネットが、こうした偏見をもたらし、助長し、うそと本当を見分けるのをいっそう困難にしている。
人々は、ブログやコメント、ツイッターで示した見解に賛成意見を返してくる同志の集まりにますます分れてきている。どうせプロパガンダだと見なす異見に触れる必要はないのだ。実際、サントラム氏は、政治家として失敗しても、今回得た名声によってメディア扇動者としての豊かなキャリアを歩めるだろう。