末期の肝臓がんを患う父親の“死期”を知ったきょうだいに起こった「変化」《親のがんを幼い子どもに伝えるときの大切なこと》

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今回と同じように親の病気や病状をお子さんに伝えたことがあったのですが、その際、「がんという病気と闘っているんだよ」と話したことがありました。

するとその子は、「それって、闘って負けちゃったってこと?」と聞いてきたのです。このときは「負けたわけじゃなくて、どれだけ頑張っても病気が治らないことがあるんだよ」と返事をしましたが、やはり言葉の使い方は難しいものだと痛感しました。

話を元に戻しますが、子どもとのコミュニケーションのなかでは、ケアに加わってもらうのも1つです。

コップに水を入れて持ってきてもらうとか、体を拭くのを手伝ってもらうとか、何かしらの役割を持たせることで、「任せてもらえた」という自己肯定感が生まれますし、チームの一員としての連帯感も出てきます。

同時に、これから起こるであろう変化(脱毛、体重減少など)や、それによって不安になったら、「黙ってなくて言葉にしていい」ということをきちんと伝えておくのも大事です。

伝え方に迷ったときは?

伝え方に迷ったときには、主治医や病院の相談室、支援団体(親ががんになった子ども、患者、家族を支援するNPO法人「Hope Tree」など)に相談してみるといいでしょう。

昨年、がんの診断を受けたことなどを明らかにしたイギリス王室のキャサリン皇太子妃(43)も、3人の子どもたちに「適切な方法ですべてを説明し、私は大丈夫だと安心させるために、時間がかかりました」と、メッセージ動画の中で発言しています。

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病気について子どもにどのように伝えるのがベストか、答えはありません。これまでお話してきたことを踏まえたうえで、「病気について子どもには伝えない」というのも、もちろん1つの選択です。

ただ、「まだ子どもだから」という理由だけで、伝えるのを先送りにしたり、あきらめたりするのではなく、いつもの親子のコミュニケーションの延長上できちんと事実を伝える。「子どもはきっと受け止めてくれる」。そう親としての感覚を信じるのも大切なことだと思います。

(構成:ライター・松岡かすみ)

中村 明澄 向日葵クリニック院長 在宅医療専門医 緩和医療専門医 家庭医療専門医

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なかむら あすみ / Asumi Nakamura

2000年、東京女子医科大学卒業。国立病院機構東京医療センター総合内科、筑波大学附属病院総合診療科を経て、2012年8月より千葉市の在宅医療を担う向日葵ホームクリニックを継承。2017年11月より千葉県八千代市に移転し「向日葵クリニック」として新規開業。訪問看護ステーション「向日葵ナースステーション」・緩和ケアの専門施設「メディカルホームKuKuRu」を併設。病院、特別支援学校、高齢者の福祉施設などで、ミュージカルの上演をしているNPO法人キャトル・リーフも理事長として運営。近著に『在宅医が伝えたい 「幸せな最期」を過ごすために大切な21のこと』(講談社+α新書)。

 

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