末期の肝臓がんを患う父親の“死期”を知ったきょうだいに起こった「変化」《親のがんを幼い子どもに伝えるときの大切なこと》

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Aさんは同い年の妻と7歳の長男、4歳の長女との4人暮らし。子どもはAさんが病気ということは知っていますが、その病気ががんであることなど、具体的にはよくわかっていません。長女は具合が悪い父親を怖がって、父親がいる部屋に入れないことが続いていました。

筆者が初診に入った時点で、Aさんの余命はすでに週単位。妻は、子どもたちに「父親の命が限られていることを伝えたほうがいい」と思っていたものの、「どう伝えるべきか」考えあぐねていたようです。

そんなとき、Aさんと長男との間で口論が発生。なにも知らない長男は、とっさに「パパなんか死んじゃえ!」と口にしてしまいます。

妻の話によると、Aさんには「長男にはしっかりしていてほしい」との思いがあってか日頃から長男に厳しく接しており、その延長線上で発生した口論だったようです。

その後、妻から筆者に「子どもたちに父親の状態について話してもらえないか」と相談がありました。

子どもに親の余命をどう伝えるか

子どもに親のがんについてどう伝えるかは、とても難しい問題です。

特にAさんのように余命が週単位となると、限られた時間のなかで“もうすぐ親がいなくなる”という事実を知らせなければならないので、難しさは増します。

筆者は妻も同席する場で、子どもたちに「パパのことなんだけどね、病気について知ってるかな?」と切り出しました。

決めていたのは、「いなくなる」という事実を伝えること、「死」という言葉は使わないこと、うそは言わないことの3点でした。

結果的に「パパは、がんという病気でいなくなっちゃう」と伝えたのですが、子どもたちは父親と会えなくなることは理解したものの、当然ながらすぐには事態を飲み込めていない様子です。

それでも会話を重ねると、「パパがいなくなっちゃうと、ママが1人で大変になるから、お手伝いをいっぱいしなきゃ」と、母親を気遣う言葉も出てきて、子どもたちなりに受け止めてくれたのかもしれないと、実感しました。

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