地震報道で話題「悪石島」での暮らしはどんなものか→銀行も病院も飲食店もない、島民《全員顔見知りの島》で小学校教師が暮らした5年間
「和則さんはほんとすごくて、巨大なイカを素手で捕まえるんです。昼間のイカはぼーっとしているから、手を頭の中に突っ込めばイケると……」


和則さんの子ども時代は、エギ(疑似餌)でサワラをおびき寄せて、モリで突く「サワラ突き漁」もしていたという。奄美やトカラなどの黒潮海域に伝わる伝統漁法だ。当て(よく魚が獲れる漁場)も完璧に把握しており、島や瀬の位置関係を見て判断できるのだという。
獣医のいない島で、牛の出産を手伝う
島では漁も盛んだが、畜産も盛んだ。
ある日、片野田さんは畜産業をしている有川和哉さん、ちづ子さんに手伝いを頼まれた。行ってみると牛の出産現場で、難産の様子。逆子になっており、子宮に手を入れて子牛の首に紐を引っかけ、引っ張り出す必要があるというのだ。
そこで「島で一番手が長そうな人」ということで片野田さんが呼ばれたのだ。
もしこのまま子牛をお腹に抱えたまま母牛まで死んでしまうと損失は計り知れない。もちろん村に獣医などいないため、片野田さんはハラハラしながらも覚悟を決めて手袋を付け、和哉さんからレクチャーを受けながら母牛の子宮に手を入れて子牛の首を探る。最初は慌てて肛門に手を突っ込み糞まみれになってしまった。
「たまたまうまくいって、ぶじ首に紐がかかって引き出すことができました。生まれた子牛には『千夏(ちか)』と名前をつけました」

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