シリコンバレーが切り拓く「軍需新時代」の不安、スタートアップが相次いで台頭しているが「いずれ持続不可能になる」との声も
スタートアップの勢いは加速しており、2024年には国防総省によるスタートアップ向け支出が前年比で2倍以上に拡大した。ただシリコンバレー・ディフェンス・グループの報告書によると、国防予算全体にスタートアップが占める割合は依然として全体の1%未満にとどまっている。
防衛予算の大半が向かう先は、依然として伝統的な大手請負企業に集中している。具体的には、ロッキード・マーチン、RTX、ボーイング、ノースロップ・グラマン、ゼネラル・ダイナミクスの5社だ。これらの企業は「ビッグファイブ」と呼ばれ、何十年にもわたり米国の防衛産業を支えてきた存在であり、政界との結びつきも極めて強い。
高い参入障壁に直面
こうした老舗企業は、確立されたサプライチェーンと大規模な生産設備という強みを持つ一方で、ワシントンやシリコンバレーの関係者からは「官僚的な階層構造に縛られ、技術革新のスピードが遅すぎる」との批判も根強い。対照的に、スタートアップは機動的な組織体制や最新鋭の技術力を強みとするが、実績に乏しい場合が多く、信頼性を最重視する政府の調達制度においては依然として高い参入障壁に直面している。
「市場はこれらスタートアップに成長を求めており、投資家もそれを後押ししている。しかし、国防総省はその流れに対応できる契約インフラや資金面での柔軟性をまだ整備できていない」と、シリコンバレー・ディフェンス・グループは報告書で指摘。その結果、民間資本が成長を続ける一方で、国防予算は旧来のプロセスや既存の請負企業に縛られたままという、「スピードが異なる2つのエコシステム」が形成される恐れがある。
「この状態は、いずれ持続不可能になる」と報告書の著者らは強調。「このままでは、エコシステム全体の成長の勢いが失われるリスクがある」と警鐘を鳴らしている。
著者:Lizette Chapman
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