シリコンバレーが切り拓く「軍需新時代」の不安、スタートアップが相次いで台頭しているが「いずれ持続不可能になる」との声も

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他のハイテク業界の有力者たちも、さらに壮大な構想を描いている。富豪らの支援を受けて進められている未来型都市構想「カリフォルニア・フォーエバー」の開発陣は、米国最大の防衛関連工業団地の建設を計画。サンフランシスコ近郊には造船所の併設も予定している。別のプロジェクト「フロンティア・バレー」では、ベイエリアにおよそ500万平方フィート(約46万平方メートル)の製造拠点を整備する構想が進められている。

「この新たな防衛の時代においては、いかに迅速に製造できるかが鍵になる」。こう語るのは、アンドゥリル、バルダ、ハドリアンに出資するラックス・キャピタルのゼネラルパートナー、ブランドン・リーブス氏だ。「誰もがスケール化(大規模展開)を目指している」という。

喫緊の課題

民間主導による一連の取り組みは、米国の国家安全保障における喫緊の課題を解消する可能性を秘める。つまり、中国に比べて著しく遅い兵器製造スピードの改善だ。現代の戦争では、自律型ドローンや艦艇、各種ハードウエアをいかに迅速に大量生産できるかが戦局を左右する。米国はこの点で不利な立場にあり、製造体制の抜本的な強化が求められている。

こうした課題に対して、VCやスタートアップ企業の間では強い危機感が広がっており、アンドリーセン・ホロウィッツのアドバイザーであるマット・クローニン氏は、米国の国家安全保障にとって「存亡の危機」だと警鐘を鳴らす。

しかし、防衛関連のインフラ整備はベンチャー投資家にとって大きな賭けでもある。巨額の資金を投じて生産体制を拡張しても、契約が必ず実現するとは限らないからだ。シリコンバレー・ディフェンス・グループが7月に公表した報告書によれば、防衛系スタートアップ上位100社に対し、VCはこれまでに700億ドル超を投資してきた。しかし、実際に締結された契約の総額は約290億ドルにとどまっている。

アンドゥリルやサロニックなどの防衛スタートアップ十数社に投資しているVC、ゼネラル・カタリストのマネジングディレクター、ポール・クワン氏は「これは典型的なニワトリが先か卵が先かの問題だ」と指摘。「民間資本はすでに動き出している。それがまさに、われわれが引き受けている投資リスクなのだ」と述べ、契約の不確実性を抱えながらも先行して資金を投じる姿勢を強調した。

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