【朝ドラ】やなせたかし「ライバルたちが活躍」も取り残されて…居たたまれない夜に誕生した"名フレーズ”とは?

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手塚は昭和22(1947)年に描き下ろし長編『新宝島』を刊行したのを皮切りに「ジャングル大帝」「リボンの騎士」などを雑誌に長期連載して、大ヒットとなった。手塚が住んだトキワ荘というアパートには、次から次に新しい才能を持つ漫画家が集い、長編マンガがもてはやされた。

憂鬱な夜に生まれた詩が名曲に

4コマ漫画を描くやなせにとっては、別世界での話のように思えたに違いない。もう仕事は終わっているのに、深夜まで起きて机に向かっていたという。せめて、そうしていないと居たたまれない気持ちになったからだろう。

ある夜も仕事部屋で鬱々としているときに、子どものころにやっていた遊びを思い出して、手元にあった懐中電灯を手のひらに当ててみた。すると、血の色が驚くほど鮮やかに赤く透けて見えたという。

「あんまりきれいで見とれてしまった。これほど絶望しているのに、体には赤い血が脈々と流れているんだ。心は元気がなくても、血は元気なんだなと、自分自身に励まされたように感じた」

このとき「てのひらを太陽にすかしてみれば」というフレーズが頭に浮かんだ。そこから一編の詩が誕生すると、やなせは「てのひらを太陽に」と題をつけている。まさか、この詩に曲がつき、大ヒットを飛ばすことになるとは、夢にも思わなかったことだろう。

漫画家としてのビジョンが描けないままに、相変わらず依頼を断ることなく、さまざまな仕事を受けたやなせ。ある日、NHKのディレクターが家に訪ねてきたという。そして、思いがけないことを口にした。

「今度NHKで漫画学校という番組をつくります。司会者として出演してくれませんか」 

マルチな才能を発揮したやなせに、「司会者」という新たな肩書が加わろうとしていた。

(つづく)

【参考文献】
やなせたかし『人生なんて夢だけど』(フレーベル館)
やなせたかし『ボクと、正義と、アンパンマン なんのために生まれて、なにをして生きるのか』(PHP研究所)
やなせたかし『何のために生まれてきたの?』(PHP研究所)
やなせたかし『アンパンマンの遺書』 (岩波現代文庫)
梯久美子『やなせたかしの生涯 アンパンマンとぼく』 (文春文庫)
真山知幸『天才を育てた親はどんな言葉をかけていたのか?』(サンマーク出版)

真山 知幸 著述家

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まやま ともゆき / Tomoyuki Mayama

1979年、兵庫県生まれ。2002年、同志社大学法学部法律学科卒業。上京後、業界誌出版社の編集長を経て、2020年独立。偉人や歴史、名言などをテーマに執筆活動を行う。『ざんねんな偉人伝』シリーズ、『偉人名言迷言事典』など著作40冊以上。名古屋外国語大学現代国際学特殊講義(現・グローバルキャリア講義)、宮崎大学公開講座などでの講師活動やメディア出演も行う。最新刊は『大器晩成列伝 遅咲きの人生には共通点があった!』( ディスカヴァー・トゥエンティワン ) 、『ひょんな偉人ランキング ―たまげた日本史』(さくら舎)。「東洋経済オンラインアワード」で、2021年にニューウェーブ賞、2024年にロングランヒット賞受賞。
X: https://twitter.com/mayama3
公式ブログ: https://note.com/mayama3/

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