
「大企業に就職することが目的だったので、大学は“就職予備校”と割り切りました。興味はないのに政治家の選挙ボランティアをしたり、学園祭の実行委員会に所属して、とにかく“ガクチカ”を作ってきました」
現在、大手証券会社に勤める大橋武宏さん(仮名・30歳)は、高校時代に両親が自己破産したことで、一時は高校卒業すら危ぶまれたが、「この状況を打破するには、いい大学に行って、いい会社に入るしかない」と決意し、奨学金を500万円借りて都内の名門私立大学に入学した。
社会人になった現在は、毎月1万5000円を奨学金の返済に充てているが、「会社が一部でも負担してくれたら、気持ちは相当ラクになる」と語る。
サラリーマンの手取り、いわゆる可処分所得は伸び悩んでいる。基本給の停滞に加え、「働き方改革」の影響で残業代も減少。一方、少子高齢化に伴い、医療や介護といった社会保障費の負担は増加の一途をたどっている。
企業が奨学金を「肩代わり」する代理返還制度
そうした中、社員が借りた奨学金を「肩代わり」する代理返還制度を導入する企業が増えている。この制度は、いわゆるサラリーマンだけが対象というわけではない。
「社長業は妻が担っているのですが、今日は北海道・旭川の美容学校で来年度の新卒採用に向けたガイダンスに参加しています。人材確保のために全国各地を回っているんですよ」
そう語るのは、埼玉県和光市で4店舗、朝霞市で2店舗の美容室を展開する、創業37年目の有限会社カットインぴゅあ取締役の小笠原幹夫氏。同社は2023年から奨学金の代理返還制度を導入している。
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