「確かに、代理返還制度には職業選択の幅をある程度制限する側面があるのは事実です。それは否定できません。以前は制度を採用している企業が少なく、選択肢も限られていましたが、現在では3700社を超えており、その分だけ選べる幅は広がってきたように感じます。
さらに多くの企業が導入すれば、進路の選択に過度に縛られることなく、柔軟な職業選択ができるようになると思います。そのためには企業側がどれだけこの制度を活用するかにかかっていますので、今のところはまだ楽観視はできない状況ですね」(同)
小林氏はそう言うが、昨今の流れを見る限り、今後、奨学金の代理返還制度を導入する企業はさらに増えていくと考えられる。
「企業の代理返還制度が広まることで、社会全体で若者の学びの機会を支えていけるようになるといいですね」(山九人事部長・小川晋氏)
導入企業が増えると企業選択の差別化がしにくくなる
一方、九州機電の管理本部・村竹浩司氏は、こうした企業の増加について、やや複雑な思いを抱いている。
「この制度は他社との差別化を図るために始めた取り組みです。しかし、多くの企業が同制度を取り入れると、当社の存在が目立たなくなってしまいます。これは奨学金に限った話ではなく、例えば初任給でも同じです。うちは中小企業としては早い段階から比較的高い初任給を提示してきました。今年のベースアップでさらに引き上げましたが、今では地元の地方銀行や、特に大手企業のほうが上を行っています。そうなると、差別化がしにくくなるのは事実です」
確かに、導入企業が増えることで学生たちの進路の幅は広がるが、人材確保を目的として制度を導入した地方や中小企業にとっては、また振り出しに戻る可能性もある。小林氏は、こう語る。
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