「奨学金を借りてる人が優遇されててズルい」という声はないの? 奨学金「企業による"代理返還"」の実態と、取材で見えた現実

✎ 1〜 ✎ 58 ✎ 59 ✎ 60 ✎ 61
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

きっかけは、埼玉県が実施している「中小企業等奨学金返還支援事業補助金」の存在をインターネットで知ったことだった。

「採用が厳しい時代ですから、少しでも当社を選んでもらえるきっかけになればと制度を始めました。うちも給与は上げていますが、同時に物価もどんどん上がっています。地方から上京してくる若者にとってアパート暮らしは避けられず、家賃も高くなってきています。そのため、自転車を会社で支給して交通費を抑え、その分を住宅手当(月1万円)に充てています。奨学金の代理返還も、そうした福利厚生のひとつです」

毎月上限1万5000円。支援期間は6年間限定

この制度を利用している社員は毎年およそ15人。入社から6年間、毎月上限1万5000円まで会社が奨学金を負担してくれる。6年という支援期間は、埼玉県からの助成が入社から6年間に限定されているためだ。

返還額は本人が毎月返済している額と同額(上限1万5000円)で、例えば1万円返済していれば1万円、1万5000円なら満額支給、2万円返済している場合でも上限は1万5000円となる。

美容専門学校の学費は2年間で約300万円。教材費などを含めると350万円ほどかかる。そのため、奨学金を利用する学生は多く、2025年度に入社した新卒社員10人中7人がJASSOや自治体から奨学金を借りていたという。

同社の初任給は22万円。例えば4月からまつ毛スタイリストの研修を始めれば、8〜9月にはデビューし、出来高制の報酬が上乗せされる可能性もある。ただし、資格取得が前提のため、簡単ではない。その一方で、同社ではまつ毛や着付けなども短期集中で学べるように設計されており、将来的に独立しても“手に職”を活かせる環境が整っている。

なお、奨学金の代理返還を給与に上乗せすると課税対象となるため、税金面でもメリットがあると誤解されがちだが、「実際は会社側の負担のほうが大きい」と小笠原氏は語る。

次ページ代理返還制度導入の懸念点
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事