”やり手”クルド人不法滞在者が「強制送還」されるまでの一部始終…送還促進に本腰を入れる入管、避けて通れない「外国人問題」のリアル
今回のM氏の送還も、飛行機が空港を飛び立ち目的地に到着するまでは、気が抜けないプロセスだった。
M氏送還は、少なくても数カ月前から、入念に準備されていたようだ。送還便の座席の手配など準備万端整えてから、数カ月ごとの仮放免の延長手続きのために7月1日(火)、東京都品川区にある東京入管局に出頭してきたところを、仮放免を不許可にする旨伝えた。M氏は大声をあげて抗議したが、まず同局の収容施設に収容した。
代理人の弁護士は、過去の退去強制処分が違法だったとして、再度の行政訴訟を提起するとともに、送還の執行停止の申し立てを東京地裁に行ったが、同地裁は7月4日(金)、申し立てを棄却した。すぐに起こされた即時抗告に対して東京高裁は、週明けの7日(月)に棄却した。最高裁に対する特別抗告は、提起されなかったか、あるいは審理されなかったと見られる。
法的な壁がなくなったところで、7日正午に東京入管から成田空港に移送した。ただ、搭乗段階で暴れ、機長判断で降ろされてしまえば、それまでの手続きはすべて徒労に帰すことになる。上記のような用意周到な準備を重ねることによって、8日(火)の便で送還が実行されたのである。
妨害行為を呼びかけるも警戒は杞憂に終わった
この間、M氏は、収容施設内から次々と仲間に連絡を取って、「車で入管局まで来てクラクションを鳴らしてほしい。入管に押し入ってほしい。必要があれば爆弾を投げてもいい。空港を閉鎖してほしい」などとしきりに扇動した。
また、「入管から出られたら、持っている情報を全部公開する。私は8日に送還されると言われたが、韓国やロシア経由でまた日本に来ることができる。AbemaTVにもまた出演する」などと強がりも言っていた。
実際、呼びかけに応じてクルド人の仲間が東京入管局に大挙して押しかける、羽田空港のトルコ航空カウンターで妨害行為をするなどの情報も流れていた(クルド人の間では成田空港ではなく羽田空港に移送されたという情報が流れていた)。
爆破を扇動する発言もあったことから、東京入管局は来訪者に身分証明書の提示を求め、庁舎内の警備を強化するなど、相当神経をとがらせていたが、結果的に杞憂に終わった。筆者も7日、東京入管や羽田空港に様子を見に行ったのだが、大きな動きは見られなかった。
6日夜、日本クルド文化協会のワッカス・チョーラク事務局長に電話をし、送還に反対する行動を起こさないのか聞いたが、「これは個人の問題。抗議行動はない。もし押しかけるとすれば親族くらいだろう」と返答し、冷めた姿勢だった。
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