”やり手”クルド人不法滞在者が「強制送還」されるまでの一部始終…送還促進に本腰を入れる入管、避けて通れない「外国人問題」のリアル

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行政上は日本在留ができないことが確定し「退去強制令書」が発付されながらも帰国しない、いわゆる「送還忌避者」は、2024年末時点で3122人いる。

入管庁にとっては長年、これらの人々の送還が課題だったが、大きな法的な壁があった。退去強制令書が発付されていても、難民申請中は送還できない、いわゆる「送還停止効」という規定である。2021年の数字だが、送還忌避者のうち難民申請をしている人が1629人と、全体の送還忌避者3224人の約半数を占めていた。

送還停止効の仕組みが送還忌避者の増大に大きくかかわっていることは、明らかだった。この点を改善するために、3回以上の難民申請者や重大犯罪者に対しては、送還停止効の例外措置が取られることとした。例外とはいっても、3回以上申請者には難民であるとの立証資料が提出されない限りは、送還停止効を適用しない、つまり、原則的に送還できるようにする。

この点を骨子とした入管法の改正は、2021年にいったん廃案となるなどの紆余曲折を経て、2023年6月に成立し、2024年6月から施行された。

送還忌避者が難民不認定取り消し訴訟を起こしたり、それに伴う執行停止の申し立てを行ったりするなど送還を一時的に免れる法的手段は残るものの、送還忌避者の問題解決に向け、大きな壁が取り除かれた。

飛行機で暴れられれば「搭乗拒否」も

昨年6月の改正入管法施行後、入管庁は、送還すべき人から送還する、という方針で、問題の多い送還忌避者の送還を積極的に進めた。

昨年12月末までの約半年間で、難民申請3回以上の難民申請者で、送還停止効の例外を適用して送還した人は17人、無期もしくは3年以上の実刑判決を受けた人で送還したのは2人となった(2024年通年の全体の送還者数は7698人、うち自費出国が6808人)。

今年1月には難民申請を繰り返しながら日本に長期間にわたり滞在し、その間に強制わいせつ致傷、強姦致傷でそれぞれ実刑判決を受け、メディアにもよく登場していたスリランカ人男性が強制送還された。

強制送還と一言で言っても、実際の現場では多くの場合、抵抗する被送還者を制圧しながら、飛行機に搭乗させて本国まで運ぶという、直接的な強制力を伴う権力行使であり、生易しいものではない。

実際、飛行機に搭乗した後、大声を出して暴れたりして、機長から搭乗を拒否され、送還が失敗することもある(2016~2022年で11件)。また、2010年には飛行機に乗せるにあたり、抵抗に対して制圧する状況で、ガーナ人男性が心臓疾患により死亡したケースもあった。

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