米国にとって中国は本当に手強い相手なのか 中国脅威論をデータで分析する

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米国が世界の覇権を確立して以来、中国は最も手ごわい相手である。国と国の対立において、最終的に勝敗を決めるのは経済力。軍事力は経済力の上に築かれる。無理して軍事力を強化しても経済がついていかなければ、その維持はおぼつかない。

それは、北朝鮮を見ればよくわかる。北朝鮮は“強盛大国”をスローガンに軍備の増強に邁進しているが、それでも韓国や日本にとって真の脅威ではない。北朝鮮が韓国に侵攻しても、韓国軍や米軍が本気で反撃に転じれば、北朝鮮軍は1週間程度で崩壊する。経済力の裏付けのない北朝鮮は“なにをしでかすかわからない”という意味においては脅威ではあるが、それ以上のものではない。

軍事力で雌雄を決してきた米国

軍事力は経済力の背景があって、初めて深刻な脅威になる。そう考えれば、経済力が劣る相手に軍事面で対決を迫り、雌雄を決することは有効な手段である。今になって思えば、太平洋戦争に突入する際の日本は、米国の術中にはまり込んでいた。

国際的に高い評価を得た歴史経済学者のアンガス・マジソン氏の統計によると、太平洋戦争が始まった1941年において、日本のGDPは米国の19%でしかなかった。日本は三国同盟を結んだドイツを頼みにしていたのだが、そのドイツのGDPも米国の24%ほどだった。相手が数分の1の国力しか有していないのならば、外交交渉を続けるより戦いによって雌雄を決したほうが、話が早い。

中国からの撤兵をめぐって日米は交渉を続けたが、その最終段階で強硬な内容を記したハルノートを突き付けられて、日本は開戦を決断した。だが、それは米国のわなにはまったと言ってもよい。

米国はドイツとの間に戦端を開きたかった。ドイツを破ってヨーロッパを支配下に置く。それは、その当時、世界を手中に収めることと同義語であった。ルーズベルトは、ヒットラーがいくら大声で叫んだところで、ドイツの国力が米国の4分の1程度でしかないことを冷徹に押さえていた。戦えば勝てる。だから、ヨーロッパの戦争に加わりたい。しかし、戦う口実が見つからない。

日本は口実を作るために利用された。交渉を長引かせて、最後にハルノートを突き付けて最初の1発を打たせた。ルーズベルトが真珠湾攻撃を事前に知っていたかどうかは大きな問題ではない。米国は太平洋のどこかで日本に最初の1発を打たせたかっただけだ。そして、それに成功した。

ソ連ですらGDPは米国の4割程度

米国は、経済力において圧倒的な差がある場合に、軍事力によって雌雄を決したがる。それは冷戦についても言える。冷戦が顕在化した1948年に、ソ連のGDPは米国の31%であった。ドイツや日本より強い。そして1958年には41%になった。戦後復興期に計画経済はよく機能した。1950年代のソ連経済には目覚ましいものがあった。ソ連が初の人工衛星(スプートニック)の打ち上げに成功したのは、1957年のことである。

米国は緊張した。この時代にはマッカーシー旋風が巻き起こり、ローゼンバーグ事件なども起こっている。しかし、戦後復興が終わると、硬直した社会主義経済の欠点があらわになった。ソ連の成長はしだいに鈍化し、1980年代に入ると米国との経済格差は決定的になった。その時代に、レーガン大統領(在位1981~1989年)はソ連に大規模な軍拡競争を迫った。そして、それに対抗できなかったソ連は自壊した。

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