【産業天気図・住宅/マンション】都心中心にマンション適地高騰から供給減・販売頭打ちも
住宅/マンション業界の天気は前半「晴れ」だが、後半は「曇り」の見通し。
住宅業界は全体の着工件数が昨年9年ぶりに128万戸を超えた。背景としては、持家の新築・建替えが引き続き底ばい傾向にあるのに対して、分譲と賃貸が伸び、着工戸数全体を押し上げた格好だ。
同様の傾向は今期も続きそうだ。持家の新築・建替えはライフスタイルの変化もあり頭打ちが続く。このため、住宅メーカーはリフォーム分野や分譲事業の強化で、収益の補強に乗り出している。一方、分譲は主力のマンションが引き続き供給が高水準だ。これはマンション需要が団塊ジュニアや同ジュニアネクスト中心に、1次取得意欲が依然高いことが背景になっている。このため、マンション調査会社の東京カンテイによると、昨年の供給戸数は全国では16万戸と高水準を維持している。
ただ、首都圏は7・9万戸と8年ぶりに8万戸を割り込む逆転現象が起った。背景は埼玉が微減、千葉は増加に対して、大マーケットの東京、神奈川が減少したためだ。特に、首都圏の約半分を占める東京の減少が大きく、首都圏8万戸割れの主因になった。東京減少の理由は2つ。1つは利便性や住環境面で優れている都心のマンション用地価格の高騰が続いているためだ。マンション用地の高騰は、販売価格の上昇に直結する。都心3区では引き続き1億円を超える超高額物件が発売され、富裕層中心に売れているが、「2月に発売された広尾ガーデンフォレストの一番高い部屋は坪1100万円を付けたが、同様に城南、城西、神奈川、三鷹などいずれも価格は強含み」(中山登志朗・東京カンテイ市場調査室長)だという。さらに、建設資材など建築費の上昇も追い討ちを掛けており、富裕層以外の取得は鈍ってきている。実際、マンション業界トップの大京を見ても、今期の販売戸数は7400戸と前期の7500戸から減少するが、それを販売単価の上昇で補って小幅増益を維持する格好だ。
販売戸数減少のもう1つの理由は、ここへきて一部のマンション業者が先高を見越して販売の後ろ倒しを進めていること。この代表例はゴールドクレスト。芝公園のタワーマンションは今期完成するが、引渡しは来期に繰り延べる予定だ。ただ、こうした繰り延べ案件はあるものの、住宅着工件数で見ると「ここ数年、首都圏で12万戸を越えているため、完成在庫の増加から着工されたマンションは来年春にかけて続々発売されることになる」(久光龍彦トータルブレイン社長)。このため、供給戸数そのものは今年は8万戸前後が維持されるものと思われる。しかし、来春までに発売される物件はいずれも用地高を背景とした、価格の高い物件が中心になる。このため、販売の動向次第では「東京オリンピックから数えて6回目のマンションブーム」(久光社長)もいったん終焉に向かう可能性がありそうだ。
【日暮良一記者】
(株)東洋経済新報社 四季報オンライン編集部
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