《震災から何を学んだか》通信インフラ--電源対策など一定程度進むが事業者でバラツキも
SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)への過信は禁物だ。今回の震災で、音声通話が不通の際にもつながった、とフェイスブックやツイッターなどSNSが情報インフラとして評価を高めた。しかし、SNS自体が災害に強いインフラを持っているわけではない。フェイスブックやツイッターなどは米国のサーバーに接続する必要があるが、「東日本大震災では、たまたま日本と海外のサーバーを結ぶ海底ケーブル5本のうち1本が生き残ったにすぎない」(NTTコミュニケーションズ)。
今回、活躍した公衆電話にも大きな期待はできない。災害時に優先的につながるシステムを採用しているため、昨年3月11日には、首都圏で公衆電話の利用回数が前年の15倍の400万回に膨れ上がった。東北地方の一部では増設の動きもあるが、過去10年以上にわたり赤字が続く公衆電話へのNTTの投資意欲は全般に低い。首都圏での災害時のインフラとしては心もとない。
企業や自治体、病院では、固定、携帯電話の両方がつながらない前提で準備を進めることが必要だ。
実効性の高い対策の一つが衛星電話の配備。衛星電話は、携帯電話と異なり、端末と衛星が直接電波をやり取りして通信をする。そのため、停電やケーブル切断の影響を受けない。屋外でしか利用ができないが、固定、携帯、衛星電話、すべてに発信可能だ。ただし、保管場所に気をつけないと肝心な時に役立たない。今回の震災で復旧作業に当たったNTT東日本の芳賀一夫・東北復興推進室設備計画担当部長は、「衛星電話を1階に置いていたため水没。結果的に孤立した自治体や病院が多くあった」と話す。
想定を超える停電、津波に襲われた東日本大震災を契機に、携帯電話の災害対策は前進してはいる。ただ、今回は停電対策が中心。業界内からは「阪神・淡路大震災後に行った対策はサービス強化が中心で、東日本大震災では十分に機能したわけではなかった。現在行っている電源対策が次の大震災時に有効とは限らない」と不安の声も漏れる。広範囲の火災が予想される首都圏直下型地震など、今後の震災はさまざまなパターンが想定される。今回の震災を機に、多様な災害を想定した取り組みを始めることが必要だ。
(本誌:麻田真衣 タイトル横写真提供:NTT東日本 =週刊東洋経済2012年3月31日号)
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