なぜ「一石三鳥」はクラファンで5000万円を集められたのか? "飲食業界の風雲児"が明かす高利益率と従業員満足を実現する《脱常識戦略》の神髄

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しかし、同社はクラファンで集めた資金で出店をしているわけではない。その狙いについて、同社の米田拓史社長は次のように話す。

「当社の経営で力を入れている点は、お客様と従業員と会社の3者を結ぶ三角形の最大化です。飲食業界では、お客様を大切にするあまり、従業員が犠牲になることが多くありました。その原因を探っていくと、飲食店の利益率の低さにたどりつきます。どんなに繁盛しているお店でも利益率が2〜3%というケースもありますが、それでは従業員の待遇を向上させることができません。実際、ほかの業界と比べて十分な報酬をあげることができず、優秀な人材を呼び込めていないのが現実です。当社は、そうした状況を変えて、飲食を夢の持てる業界にしたいと考えています。その手段の1つとして、クラファンを活用しています」

クラファンがもたらす資金調達以外の恩恵

一般的に飲食店の経費はFLRコストが70%を占めている。Fはfood(原材料費)で、Lはlabor(人件費)、Rはrent(家賃)だ。

しかし近年、原材料費の高騰などの影響を受け、その指標が通用しなくなっている。加えて、コストが高騰した結果、利益が圧迫され、それが待遇向上の障壁になるなど、悪循環に陥っている飲食店も目立つ。

そうした状況の中、同社が展開している店舗の半分近くは利益率が35%を超えており、その好調さを反映して月収が70万円を超える店長が何人もいる。それができるのは一石三鳥がブランドのコンセプトどおり、“新たな価値”を提供しているからにほかならない。

高級店と遜色のない内装で、特別な食体験ができることに価値を感じる人は多い(写真:Human Qreate 提供)

内装が顕著な例だろう。「鮨処 一石三鳥」の内装は、和を基調にしたスタイリッシュな空間で、カウンター席から職人の仕事ぶりを間近で見られるライブ感が売りだ。客はそこで過ごすことに価値を感じるのはもちろん、その味にも魅了されて心をつかまれる。その結果、1万5000円という客単価をリーズナブルに感じるとともに、同店のファンになっていく。

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