【小川町】埼玉で移住希望者が1番多いワケは? 都心まで70分、"ゆる移住"が叶う「ちょうどいい田舎」の秘密

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

有機の里で出会う、若い移住者はあらゆるスキルを持っており、阿部さんにとって驚きの連続。こうした移住者や地元の方たちとの交流は「良くも悪くもこれまで関わることのなかった存在。町のコミュニテイと関わったことでゆるやかな広がりを感じている」と話します。

両親の見守り、介護、看取りがきっかけで住んだ町で、町の活性化に励む役場、商工会、NPOや移住者に刺激を受けて新たな「一杯のカレー」から始めた阿部さん。それは父の背中を子らへ見せることでもあったようです。

「小川ぐらしの茄子おやじ」店主の阿部さん
カレーとともに歩んできた30年以上の日々を振り返り、ぽつりぽつりと言葉にする阿部さん(写真撮影/栗原論)

かなえたかったのは、都心と離れすぎずに田舎を満喫できる暮らし

企業勤めや個人で仕事をしている人たちにとっての小川町での暮らしはどうでしょうか。

広告会社勤務後、ブランディングやコンテンツ制作を行う会社を経営している柳瀨武彦(やなせ・たけひこ)さんは、週末通いから移住に移行しました。

小川町移住者の柳瀨さん
都内で働き暮らしていたが、自宅も職場も小川町に移した柳瀨さん(写真撮影/田上浩一)

「当時暮らしていた場所とは異なる、自然豊かな地域に身を置きたいと。会社を辞めて独立するタイミングで『都内から通える田舎』を探していました。小川町は豊かな自然に加えて都内から電車や車で行きやすいところが気に入りました」

小川町の農地
柳瀨さんは、「農」の豊かな風景に引かれたという(写真撮影/田上浩一)

デスクワークが多く、頭ばかりを使う日々。体を動かし、五感を揺さぶる営みに触れたかった柳瀨さんは、有機農業を学びに2016年から毎週のように通い始めました。

「この町はまるで大学のキャンパスみたい。多様なコミュニティがほどよい距離感で共存しています。あちらこちらでちっちゃいイベントがあるから、誰かと知り合えば『あ、じゃあまた〇〇を紹介するね』と有機的なつながりができていくんです」

自然発生する人のつながりの中で「養蚕伝習所の跡地(玉成舎)を使わないか?」と誘われ、喫茶店「PEOPLE」をオープンしました。

「玉成舎」外観
町の産業を支えてきた養蚕伝習所を多様なお店が集まった「人と文化の交遊拠点」として2018年にリノベーションした「玉成舎」(写真撮影/田上浩一)
柳瀨さん夫妻が営む喫茶店「PEOPLE」
柳瀨さん夫妻が営む喫茶店「PEOPLE」。2階には“植物本屋”「BOTABOOKS」がある。喫茶店でくつろぎながら本を読む時間は至福(写真撮影/田上浩一)

平日は都内で仕事、週末は小川町で店を営業しながら暮らすスタイルに。週末通いの1.5拠点生活の始まりです。その後、2020年には小川町へ家を構えて2拠点生活になりました。2021年、柳瀨さん夫妻に子どもが誕生し、ついに都内の家を手放して、小川町へ引越し、完全移住したのです。

今、自身の仕事に加えて、夫妻で喫茶店や“植物本屋” 「BOTABOOKS」を運営するほか、町の人々が登場するポッドキャスト『おがわのね』を主催するなどして、暮らしを楽しんでいます。

次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事