【小川町】埼玉で移住希望者が1番多いワケは? 都心まで70分、"ゆる移住"が叶う「ちょうどいい田舎」の秘密

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

「有機栽培を経験したい、学びたいと多くの人が『しもざと有機野菜塾』に足を運んでいます。その魅力にとりつかれ、小川町にそのまま移住する人もいるんです」(八田さん)

日常的な町の魅力を伝えるために始めた宿

「住民の属性が偏っていないこともこの町のよさですね」と八田さん。農家をはじめ会社員、クリエーター、商店を営む個人事業主などがいます。

株式会社わきまの高橋かの(たかはし・かの)さんと中市里美(なかいち・さとみ)さんは、町の中心部で3つの宿泊施設を営んでいます。

実は高橋さんが小川町に訪れたきっかけも有機農業でした。霜里農場で研修をし静岡で就農したお父さんの影響もあり、2019年に小川町へ移住。都内の会社の学生インターンとして、町内で開催されるイベント「Ogawa Organic Fes」の運営や、町の農業ブランディング事業をお手伝いをすることになりました。

株式会社わきまの高橋かのさん
株式会社わきまの高橋かのさん。どこを訪れても「あ、かのちゃんね」と人々が口にするほど、町の人たちとゆるやか、かつ網羅的につながりを持つ(写真撮影/栗原論)

次第に町の人たちと関係を深めていった高橋さん。「一人で飲み歩いたり、いろいろなイベントの実行委員やボランティアをしているうちに、価値観を共有できる方たちとたくさん出会えたんです。その中で『まちやどをやりたい』というNPOメンバーと意気投合したのです。2019年にNPOが『小川まちやど ツキ』を立ち上げ、私は住み込みの女将(おかみ)という形でオープンを手伝いしたのです」と話します。

まちやどとは、まちを一つの宿と見立て、まちぐるみで宿泊客をもてなすことで地域価値を向上していくことを目指す考え方のこと。高橋さんたちの目指すまちやどは、ここに訪れる人たちが小川町の日常を感じ、隠れた小川町ならではの面白さを発見できる拠点になることを目指していました。

コロナ禍の2021年には高橋さんが個人名義で「三姉妹」を開業。同時期に都内との二拠点生活をし始めた中市さんが近所で「ジットハウス」の開業準備を始めていたため、2022年に共同で会社を立ち上げました。

以降は、NPOから引き継いだ「ツキ」も併せて3つの宿泊施設をまとめて「小川まちやど」として運営しています。

小川町のまちやど「ツキ」
窓辺から、遮ることのない雄大な風景が望める「ツキ」。この景色の味わえる建物だからこそ、訪れる人に伝えられることがあると、まちやどにすることに(写真撮影/栗原論)
「ツキ」の2階
「ツキ」の2階からは町のシンボル、槻川をのぞむことができる(写真撮影/栗原論)

宿の清掃や運営は、二人を中心に町内に住む人たちが協力して日常的に行っています。その他にも、町の人たちとの関係性の中で、コワーキングやレンタサイクルが利用できる宿泊プランを開発したり、宿で開くピラティス教室や有機農家による家庭菜園講座の場として活用したり、宿をきっかけに訪れる人とまちとの接点をつくるための工夫をしたりしています。

昔ながらの商家住宅の雰囲気が残る「ツキ」1階
「ツキ」の1階。宿泊施設としてリノベーションされてもなお、昔ながらの商家住宅の雰囲気が残る(写真撮影/栗原論)
次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事