作家の桐野夏生氏が喝破「夫婦同姓は理不尽なシステム」、選択的夫婦別姓が実現しないのは「国が家族を規定するという非合理な考えがある」

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主婦が働く場合、家計の補助的労働と考えられてきました。だから非正規が多く、景気の安全弁でした。人が足りなくなったら使われ、十分になれば捨てられます。それは生殖においても同じ。働き手がいなくなれば中絶禁止と言い、余剰すれば中絶を解禁する。この国は女の人を都合よく使ってきました。

でもそれを突き破る1つの手段が選択的夫婦別姓だと思います。私が生きているうちに変わるのだろうかと心配ですが、そういうところからやっていかないと、日本は人が生きる上で自由に選べる国なんだ、とは思われないでしょうね。

男性たちは下駄を履かされていた

――改姓による負担も、まるで自己責任かのように多くの女性たちに負わされています。

結婚した夫婦の95%で男性の姓になっているということは、男性たちは今まで下駄を履かされていたことに気づいていないということです。(男女不平等をもたらした)システムは社会の責任でも、そのシステムによって得をしていることに気づかずにいることは、その人の責任だと思います。

――男性にも責任があるのだから、女性から「改姓したくない」と話を持ち掛けられたときに、「常識だから」「それが社会だから」と言える時代ではないと。

そう思い知るべきです。女性はそんな風に言われたら、「ハラスメントだ」「人権侵害だ」「私の母も人権侵害されてきたのだ」と言えばいいのです。

男性も、なぜこういうことになっているのか、考え、調べないといけないと思います。なぜ保守系の政治家は、選択的夫婦別姓になったら、「家族の一体感」が損なわれると言っているのだろうと、その理由を考えるべきではないでしょうか。もっと問題を相対化すれば、どこかで自分に必ずつながる問題です。

――どうしたら相対化して姓の問題を考えられるのでしょう。

想像力と勉強ではないでしょうか。この制度を作ってきた男性たちは、自分の姓が変わるとは端から思っていません。自分がもし女に生まれて、好きな人と結婚するのに名前を変えないといけないとなったら嫌だと思わないか、という発想がまずない。圧倒的に想像力と優しさの不足です。

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