どこか似た者同士ともいえる「トランプとプーチン」 2人を結びつける《ストロングマン》への強いこだわりとは

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スティーブン・レビツキーとダニエル・ジブラットは『民主主義の死に方』において、トランプによってもたらされたアメリカ社会の変容を次のように描いている。

〈トランプ大統領のもと、アメリカ社会は政治的逸脱の定義を下げつづけてきた。大統領が日常的に個人攻撃、いじめ、噓を利用することによって、当然のごとくそれらの行為がだんだん正常なものに近づいていく。(……)以前は恥ずべき行為だと思っていたことに、人々はどんどん慣れてしまうのだ〉(スティーブン・レビツキー、ダニエル・ジブラット『民主主義の死に方 二極化する政治が招く独裁への道』濱野大道訳、新潮社、2018)

自国中心主義の延長線上にあるマッドマン・セオリー

これは、トランプがマッドマン・セオリーを用いて、目の前の交渉相手だけでなく、アメリカ社会そのものを自らに都合のよい形に変容させていることを物語っている。トランプとプーチンは、まさに世界の二大マッドマン・セオリー実践者である。

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この2人が相互に親近感を抱くのは、ごく自然なことであろう。

さらに2人に共通するのは、自国中心主義の姿勢である。トランプが「アメリカ・ファースト」を繰り返し唱えるように、プーチンもまた「何よりもまずロシアを」と主張し続けている。

こうした姿勢は、グローバリゼーションによって疲弊した国民の不満を吸収し、ストロングマンとしての立場を強固なものにしている。

常識では測れない言動で交渉相手や国民の思考を攪乱し、交渉を優位に進めるという点で、マッドマン・セオリーは自国中心主義の延長線上にある。そしてその根底には、自己と国家とを一体視する強い心理的傾向が存在している。

このように、両者の政治的方向性や野心には顕著な類似点が見られる。すでに自らの政治理念を実現化しているプーチンに対し、これから実現しようとしているトランプが親近感を抱くのは当然である。また、プーチンにとっても、トランプは歓迎すべき政治的同胞として目に映っているのだろう。

佐藤 優 作家・元外務省主任分析官

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さとう まさる / Masaru Sato

1960年、東京都生まれ。同志社大学大学院神学研究科修了。

2005年に発表した『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』(新潮社)で第59回毎日出版文化賞特別賞受賞。2006年に『自壊する帝国』(新潮社)で第5回新潮ドキュメント賞、第38回大宅壮一ノンフィクション賞受賞。『読書の技法』(東洋経済新報社)、『獄中記』(岩波現代文庫)、『人に強くなる極意』(青春新書インテリジェンス)、『いま生きる「資本論」』(新潮社)、『宗教改革の物語』(角川書店)など多数の著書がある。

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