どこか似た者同士ともいえる「トランプとプーチン」 2人を結びつける《ストロングマン》への強いこだわりとは

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〈(……)〔この言葉は〕脅迫や暴力で統治する指導者というニュアンスがある。(……)欧米ではロシアの大統領プーチンにもよく使われる言葉だ〉(金成隆一『ルポ トランプ王国─もう一つのアメリカを行く』岩波新書、2017)

つまり、トランプとプーチンは、いずれもストロングマンと呼ばれる存在であり、強権的な政治スタイルに共通性があるのだ。

この同じあだ名で呼ばれる2人のスタイルには、当然ながら顕著な類似点がある。その代表的なものが、いわゆる「マッドマン・セオリー」の使い手であるという点だ。

プーチンは計算づくの「偽マッドマン」

マッドマン・セオリーとは、あえて自分が予測不能で常識の通じない存在だと思わせることで、交渉相手の判断力を鈍らせ、譲歩や妥協を引き出す戦術である。

秩序や理性を前提に成り立つ外交・政治の場において、あらかじめ「理不尽さ」を戦略化することで、相手を心理的に追い詰め、主導権を握る狙いがある。

永綱憲悟は『大統領プーチンと現代ロシア政治』において、プーチンの交渉スタイルを次のように表現している。

〈(……)外交場面では、一見ソフトなあたりをみせながら、結果的に肝心なところは一歩も譲っていないという態度となって現れる。ちなみに米国では、エリツィンが「ノー、ノー、ノー」といったときは「イエス」を意味しているが、プーチンが「イエス、イエス、イエス」といったときは「ノー」を意味しているというジョークがささやかれているそうである〉(永綱憲悟『大統領プーチンと現代ロシア政治』東洋書店、2002)

このような態度は、まさにマッドマン・セオリーの典型である。私は、プーチンは決して本物の狂人ではなく、交渉戦略として意図的に狂人を装っているのではないかと考えている。

本物のマッドマンとは、たとえばイランのアフマディネジャード元大統領のような人物を指す。イスラエルを地図から抹消すべきと主張し、核開発を進めた彼のような存在には、外交的抑止理論は通用しない。その点で、プーチンは計算づくの「偽マッドマン」であろう。

この戦略では、狂気じみた言動によって相手に妥協を引き出させ、いざ交渉に入ると現実的な論理を展開する。相手は譲歩したことで関係構築に成功したと錯覚するが、すでに交渉では敗北しているのである。

そして、このマッドマン・セオリーを世界規模で実践しているのがトランプなのである。

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