なぜトランプ大統領はここまで強硬にイスラエルを支持するのか…「日本人には理解しづらい」宗教的な背景を探る

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ディスペンセーショナリズムを信じる人々は聖書を字義通りに解釈し、聖書に書かれている言葉を信じ、そして、神学上の解釈を確信するだけではなく、実際にユダヤ人をパレスチナの地に帰還させるための政治・社会運動も展開している。

トランプの考え方はディスペンセーショナリズムではない。しかし、イスラエル国家を特別視するクリスチャン・シオニズムという考え方には好意を持っている。

この背景を踏まえれば、トランプが外交においてもイスラエルに対して特別な配慮を見せる理由は明白である。宗教的信念と政治的実利が交差する地点に、彼のイスラエル観は存在しているのだ。

「歴代の政権」がイスラエルを支持している

一般的に言って、アメリカ政府は民主党政権であろうが、共和党政権であろうが、一貫してイスラエル支持の政策を維持している。その理由としてしばしば挙げられるのは、ユダヤ系のメディアやユダヤ系政治家による影響力である。

確かに、アメリカ国内の政治・報道・文化においてユダヤ人のプレゼンスは非常に高く、その影響は無視できない。しかし、親イスラエル政策の根拠はそれだけではない。

むしろ重要なのは、アメリカ国内において、ユダヤ人のシオニストと利害を共有するクリスチャン・シオニストが、巨大な勢力を築いているという点である。

彼らは宗教的信念と政治的行動を結びつけながら、イスラエル国家を擁護し続けている。

現在、パレスチナという土地には、イスラエルとパレスチナという異なる民族と宗教を背景とする2つの国家が、事実上併存している。

しかし、アメリカ人の間で形成されている感情は、ユダヤ人とパレスチナ人とでは大きく異なる。上坂昇は『神の国アメリカの論理』のなかで、次のように指摘している。

〈アメリカ国民一般も、イスラエルに対しては特別の感情をもっている。国際社会では、イスラエルのパレスチナ人に対する非人道的な抑圧が非難されるが、アメリカ人は圧倒的にイスラエル支持であり、パレスチナ人に対してはきわめて冷淡である〉(上坂昇『神の国アメリカの論理 宗教右派によるイスラエル支援、中絶・同性結婚の否認』明石書店、2008)
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