なぜトランプ大統領はここまで強硬にイスラエルを支持するのか…「日本人には理解しづらい」宗教的な背景を探る

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ロシアに関しては、ウクライナ侵攻以後の経済制裁の一環としてすでに別途関税が引き上げられていたという事情があるかもしれない。しかし、イスラエルに対してはそのような説明は成り立たない。

イスラエルのネタニヤフ首相は、対米貿易赤字の解消に努めると発言しているが、たとえその真意があったにせよ、他国との取り扱いと比べれば、トランプがイスラエルを「特別な国」として扱っていることは明らかである。

2015年、大統領選への出馬を表明した際、トランプは次のように発言している。

〈彼(オバマ)がイランと結ぼうとしている協定を見てごらんよ。あんな協定を結んだら、イスラエルはもう存在しなくなってしまう。大災難だね。僕たちはイスラエルを守らなきゃならないっていうのに〉(西森マリー著・訳『完全対訳 トランプ・ヒラリー・クルーズ・サンダース演説集 何が勝負を決したのか?』星海社新書、2016)

この発言からも、トランプがイスラエルを特別視していることがわかる。彼にとって、アメリカの次に重要な国は、ユダヤ人国家イスラエルなのである。

「クリスチャン・シオニズム」という考え方

では、なぜトランプはイスラエルをこれほどまでに重視するのだろうか。その理由を端的に言うならば、彼がクリスチャン・シオニズム(Christian Zionism)の理解者だからである。

クリスチャン・シオニズムとはユダヤ人の聖なる地であるパレスチナへの帰還と1948年のイスラエルの建国とが聖書の預言通りに実現されたことであると強く考えるキリスト教思想の1つである。

クリスチャン・シオニストはディスペンセーショナリズム(Dispensationalism)を信じている。

ディスペンセーショナリズムとは、聖書の歴史を神による複数の時代(経綸)に分けて理解し、それぞれに神の異なる啓示と人間の責任があるとする立場である。

この神学は、聖書を字義通りに読み、ユダヤ人と教会を厳密に区別し、イスラエル建国や終末預言に特別な意味を認める点が特徴である。

この思想はいつかキリストが再臨して、神の国イスラエルで、ユダヤ人と異邦人の区別なく神を信じる者たちが救われ、千年王国が到来すると唱えている。

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