2025年に世界1位を獲得した「ニッケイ料理」とは? 「世界のベストレストラン50」から見るレストランの「いま」

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Maidoの店内
Maidoの店内(写真:The World's 50 Best Restaurants)

投票者が訪問することがランクインの条件となるので、訪れたいと思わせるためには、料理の、またシェフ自身の個性が際立っている必要がある。

奇抜であれば良いかというともちろんそんなことはなく、料理がおいしいことは基本条件、その上でプラスアルファとして、ゲストの心に残るサービスがある、シェフが料理を通じて社会の課題解決にコミットする姿勢を発信している、など別の要素が求められるのだ。

世界1位という称号には特別な意味がある。2013年と2015年に1位を獲得したレストラン「エルセジュール・カン・ロカ」(スペイン)のジョアン・ロカ氏は、「授賞式から24時間以内に、200万件もの予約リクエストがあった」と語っている。

単に「ニッケイ料理」で有名だからではない

世界でこのようなランキングに入ってくるレストランは、単なる1軒のレストランというだけでなく、「いま」の時代を代表するような時代性が求められている。

「マイド」にしても、単に「ニッケイ料理」で有名だというだけではない。「ニッケイ料理」がペルーでもそれほどの地位を持っていなかった16年前からレストランを始め、ニッケイ料理を現代ペルー料理の1ジャンルとして昇華させた立役者とみなされている。

授賞式で壇上に上がったツムラさんは、場内からの拍手と歓声を受け、感激のおももちで次のように語った。

「私は、ガストロノミー、料理、ホスピタリティには、すばらしい力があると信じています。いま、私たちの間に違いがあるこの瞬間においても、私は、ガストロノミー業界こそが『人がどうやってひとつになれるのか』を示す模範だと思っています。

私たちは『持続可能性』や『環境』について多く語りますが、『人間の持続可能性』についてはあまり語られません。でも私は、私たちが世界に示せるはずだと思うのです。食の力で何ができるか、どうやって人々をひとつにできるかを」(ミツハル・ツムラさん1位受賞スピーチ)

ツムラさんは移民として、日本とペルーの両方にルーツを持ち、世界1位を獲得するまでの困難を語った。かつて閉店を考えたツムラさんを「忍耐強く、自分を信じて」と励ましたのはツムラさんの父だったという。

世界のグローバル化とは対照的に個々の国が主張を強めるいまの時代、そのようなレストランを1位に推挙したのが2025年の「世界のベストレストラン50」が世界に発信するメッセージだといえるだろう。

【写真】ランキングの表や受賞したレストランの料理など(8枚)
星野 うずら レストランジャーナリスト

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ほしの うずら / Uzura Hoshino

出版社勤務のかたわら、アジアやヨーロッパなど海外のレストランを訪問。個人サイト「モダスパ+plus」やTwitter(@caille2006)で、「ミシュラン」「ゴ・エ・ミヨ」などガイドブックの解説記事やレストラン評を執筆。飲食専門のポータルサイトでシェフインタビュー連載中(飲食店.com)。Instagram(@photo_cuisinier)では、飲食に携わる人のポートレートを撮影している。
 

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