日本の餃子が世界で愛されるようになった理由とは? カンヌライオンズで注目を集めた「日本食のクリエイティビティの秘密」

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本田:「テイストアトラス」という世界ランキングで日本食が第2位に選ばれました。これはうれしいニュースですよね。そして、こちらがそのトップ30の国のリストです。皆さん、自分の国は入っていますか? ちょっとしたクイズですが、1位と3位はどこの国だと思いますか? 予想できますか?(会場から予想の声が上がる)

こちらが答えです。3位はギリシャ、1位はイタリアでした。おめでとうございます! イタリアやギリシャから来ている方はいますか? おめでとうございます。さて、森さん、松嶋さん、日本食が世界中でこんなに愛されていることについて、どう思われますか?

松嶋:この結果を見て思ったのが、1位のイタリア。私はヨーロッパに住んでいるのですが、イタリア映画の影響があって、イタリア料理が世界に広がったのではないかと考えました。それが第一印象です。ギリシャ料理が人気なのは、昔ギリシャがヨーロッパ中を支配していた歴史と文化があるからでしょう。だからギリシャ料理も広がっている。

日本が2位だったのは、日本のコンテンツ、特に「マンガ」の影響があると思います。世界中でマンガが評価されていて、それが日本食の拡散にも貢献したと思います。それに加えて、今、日本円が非常に安いですよね。カンヌに来ている日本人も円安で苦しんでいます。

でも逆に言えば、円が安いからこそ、海外から日本へ旅行に行きやすくなっているし、日本の食材も海外へ輸出しやすくなっています。この2つの要因が大きく影響していると思います。

本田:ありがとうございます。森さんはいかがでしょうか?

:はい、日本の立場から少しお話しします。日本は南北に長く、海に囲まれた島国なので、四季折々、さまざまな地域で多種多様な食材が手に入ります。その結果、日本では食の「多様性」や「地域性」がとても豊かです。さらに歴史的にも、国内だけでなく海外の料理も取り入れてきました。海を越えてやってくる外国の食文化はとても貴重だと思っていますし、日本人は新しいものに対する好奇心がとても強いですね。

本田哲也氏(本田事務所 代表取締役 / PR ストラテジスト)がセッションのモデレーターを務めた(写真:カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル)

本田:ありがとうございます。本当に興味深いランキングでしたね。さて、日本食といえば、お二人は世界に日本食を広めるうえで非常に大きな役割を果たしてきたと思います。松嶋さんは、ここフランスで活躍する日本人シェフとして、そして森さんは日本を代表する食品会社である味の素の欧州代表として。お二人のこれまでのご活動について教えてください。

「うま味」を使った料理を生み出す

松嶋:私はフランスでレストランをやっています。自分の料理に日本人としての特徴をどう出すか、ずっと考えてきました。ただ日本の食材を使うというのは簡単なのですが、私はあえてヨーロッパの伝統的な食材を使って、そこに日本的な「ひねり」を加えるようにしています。そうしなければ、地元の人たちには尊敬されませんから。常に「地元の食材をどう使うか」「日本人シェフとしての強みをどう見せるか」を意識してきました。

そこで気づいたのが、「うま味」です。「うま味」を使うと、日本人にとって親しみのある味になります。私がレストランをオープンしたのは20年前ですが、その当時ヨーロッパには「うま味」という概念がありませんでした。言葉自体が、ようやく少しずつ知られ始めたくらいでした。日本では、「うま味」の研究はすでに100年近い歴史がありますが、ヨーロッパではそうではなかった。だから私は、「うま味」を使った料理を自分なりに生み出してきました。

それが結果として、ヨーロッパで認められることにつながったのだと思います。お客様からはよく、「前にも食べたことのある料理なのに、あなたの料理は味が違う」と言われます。それは、私が「うま味」を引き出しているからなんです。食材本来の味をきちんと引き出すようにしているから、違いを感じてもらえる。ヨーロッパでは、基本的に味は「甘味・酸味・塩味・苦味」の4つしかないと言われています。人間の舌はその4つしか感じられないと。

でも、日本では100年以上前から「5番目の味=うま味」が存在すると主張してきました。そして20年前、アメリカの大学の研究で、ついにその「うま味」の存在が科学的に証明されたんです。

本田:ありがとうございます。森さんはいかがでしょう?

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