TPP参加問題、製造業にとっても無益、農業には壊滅的打撃も
第二に、TPPに参加すると、わが国の独自の食品安全規制などの社会的規制、取引慣行、企業の労働慣行、さらには言語や文化にも関連するいわゆる「非関税障壁」に対し、さまざまな変更や撤廃を迫られる可能性が高い。これは、医療、食の安全、金融、保険、投資、雇用、人の移動、政府調達など、多くの分野に広範な悪影響を及ぼし、日本社会にとって大きな脅威となる。あえて言えば主権にかかわる問題である。
第三に、TPPに参加すると、波及的に資本市場への参入規制についてさらなる緩和を迫られる可能性がある。しかし、資本の野放図な国際的移動と投機の放任がリーマンショックなどの大きな経済危機の原因となってきたことは、すでに誰もが知っている。むしろ現在、金融に対しては規制を強化していくことが求められている状況である。
第四に、関税同盟であるTPPへの参加は、特定の経済ブロックに加わることであり、これは、日本の重要な貿易相手国である中国、韓国、タイなどのTPP非参加国を排斥する意味と効果を持つ。これは、これら新興国のプレゼンスが今後さらに大きくなっていくことを考えると、製造業にとっても極めて悪い選択である。ちなみに「ブロック経済化」は開放(“平成の開国”)とは正反対の概念だ。
つまりTPPへの参加は、(なぜか参加に熱心な)製造業にも何ら利益をもたらさない一方、農業やサービス業など製造業以外の産業には、大きな不利益をもたらす。非常にばかげた選択であるといえよう。
つまり、製造業の立場からいっても、TPP参加には、「ノー」と言うべきなのだ。
さらにTPPへの参加には、農業分野への影響に関連して、非常に懸念される問題がある。それは地方のさらなる衰退だ。
現在、道州制導入の必要性が叫ばれるようになって久しいように、地方分権をよりいっそう推し進めていくことは、しだいに国民のコンセンサスになりつつある。だが、地方分権を進めるに当たって重要なことは、それぞれの地域が、経済的にも、また人口の面でも、自立するための活力を増やしていくことだろう。