(第40回)スリム化で復活するアメリカ自動車産業

これまでアメリカの自動車産業は、従業員に手厚い保護を与えていた。退職後も年金を支給し、医療費の面倒を見た。労働組合が強いからだが、日本の企業一家より温情的で家族的だとも言える。ただ、企業の側から見れば、これは重い負担だった。09年にアメリカ政府から支援を受ける際に、それらが整理されたのだ。それによって企業の負担が軽減され、利益が増えた。

身軽になった自動車産業は、今後もアメリカ国内に残るかもしれない。これまでの自動車産業の生き残りは、次項で述べるように、政治力に頼るものだった。しかし、今後は、さして巨大ではないが強い産業として残る可能性がある。

これは、労働者から見れば、厳しい事態だ。先進国において製造業が生き残るための必要条件は、資本主義の論理を冷徹に貫き、雇用を整理してスリム化することだと分かったからだ。先進国での製造業の復活は、「ジョブレスリカバリー」にならざるをえないのである。

大統領選のキャンペーンで、製造業の復活が謳われている。労働者はそれを聞いて、雇用が戻ることを期待するだろう。しかし、それは実現しない。資本家はそれを聞いて、利益の復活を期待するだろう。こちらは実現する可能性がある。同床異夢のうち実現するのは、資本家の夢である可能性が高い。

垂直統合企業は政治力が強い

製造業がアメリカから撤退していく中で自動車産業が残ったのは、それが垂直統合型の産業であるためだ。この間の事情を説明しよう。

政治・経済の人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • 新型コロナ、長期戦の混沌
  • コロナ後を生き抜く
  • 最新の週刊東洋経済
  • 占いのオモテとウラ
トレンドライブラリーAD
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
脱・ストレス 不安加速社会<br>への4つの処方箋

コロナ禍で、人と会ったり飲み会をしたりといった従来のストレス解消法がしづらくなっています。そんな今だからこそ、「脳」「睡眠」「運動」「食事」の専門家が教えるコンディショニング術でストレスフリーな状態を目指しましょう。

  • 新刊
  • ランキング
東洋経済education×ICT