「意見が合わない」「話がまとまらない」とき喧嘩せずまとめるには――"対立"の中身に応じて対処法を変えるのがポイント

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先の例で言えば、Aさんは「なぜ株主への利益還元を優先すべきだと考えるのか」、Bさんは「なぜ従業員の幸福度向上を優先すべきだと考えるのか」について、具体的なエピソードを交えながら話してみるのです。

Aさんは、「過去に経営危機に瀕した企業で、株主からの資金援助によって救われた経験がある。株主は企業のリスクを負ってくれる存在であり、報われるべきだ」というエピソードを語るかもしれません。

一方で、Bさんは「長時間労働や低賃金で働く従業員の姿を見て、従業員の幸福度こそが企業成長の原動力だと信じるようになった」というエピソードを語るかもしれません。

このような対話を通じて、単に意見の相違を認識するだけでなく、相手の信念の根源にある体験や感覚を理解することができるでしょう。

そして、相手の物事の捉え方に触れることによって自身の物事の捉え方を相対化し、新たな視点を得るきっかけになるわけです。

重要なのは、相手の考えをそのまま受け入れることではなく、受け止めることです。「あなたはそう考えるのですね」という受容的な態度を示すことで、相手は安心して自身の考えを語ることができます。

次に、ここでの「言葉」とは、その信念をつくるに当たって使われた言葉のことです。

たとえば「株主への利益還元」とか「従業員の幸福度」といったものがそれに当たります。株主への還元を重視するAさんは「従業員の幸福度」を、「コストをかけて従業員を甘やかすもの」と捉えているかもしれません。

一方で、従業員の幸福度を重視するBさんは、それを「企業への貢献意欲を高める投資」と捉えているかもしれません。それぞれのイメージや感覚を丁寧に理解することで、それぞれの人が納得できる範囲が広がっていくのです。

両者に共通の目的を見出す

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経験と言葉について共有したうえで、両者の「共通の目的」を見出していくことが重要です。たとえ「株主価値」と「従業員価値」という、それぞれ異なる価値観を優先していたとしても、「持続可能な企業成長を実現したい」という目的は共通しているかもしれません。

共通の目的を認識することで、対立していた両者は、協力して目的を達成するための方法を模索することができるでしょう。

たとえば、「従業員の創造性と貢献意欲を高めることで、長期的な株主価値の向上を目指す」といったものがそれに当たります。

そうなれば、「目的レベルの対立」は「手段レベルの対立」に変換され、具体的な人事制度改革や企業文化醸成といったレベルで、その目的を実現するための最適な手段を共同で検討することができるでしょう。

堀越 耀介 東京大学UTCP上廣共生哲学講座 特任研究員

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ほりこし ようすけ / Horikoshi Yosuke

1991年生まれ、東京都出身。東京大学大学院教育学研究科博士課程修了。博士(教育学)。学術的な知見と、5000人以上に対する対話のファシリテーションの経験を融合させ、企業が課題解決や価値創造に取り組む活動を支援している。NECソリューションイノベータ株式会社、三井不動産株式会社、株式会社SBI新生銀行、株式会社LegalOn Technologiesをはじめとする多様な企業に対して、「哲学」と「対話」によって組織の潜在能力を最大限に引き出すコンサルティングを実施。株式会社ShiruBeでコンサルタント/上席研究員を務め、株式会社電通と研修プログラムの共同開発をおこなうなど、活動の場を広げている。著書に『哲学はこう使う――問題解決に効く哲学思考「超」入門』(実業之日本社)。『Forbes JAPAN』をはじめ、各メディアでも幅広く活躍する。

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