貴志祐介氏に聞く「面白い小説を書くコツ」 小説を書くのに「文書読本」は役立たず

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──工夫のしがいはキャラクターにある?

読者はキャラクターが好きだ。SFでよくあるのは、SF的なアイデアにこだわるあまりに登場人物がどれも同じような科学者タイプになること。これは読み進めるのがつらい。例が同じになるが、『悪の教典』の場合、かなりキャラクター小説の色が強い。ある種、誇張した戯画的なキャラクターもいるが、ぱっと読んで前に出てきたあのキャラクターだとすぐにわかってもらえなければいけない。

主人公の名前は、自分の中でしっくりくるもの

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──「貴志流」というものは。

主人公の名前は自分の中でしっくりくるものでないといけない。最近はないが、昔はほとんど書き終えてから全文検索して名前を変えたりもした。『悪の教典』の蓮実聖司は、最初、違う苗字にしたが、ほぼ同時期に出たほかの作家の小説と苗字がかぶっていたので変えた。

──『黒い家』は菰田幸子という大阪の怖いおばさんが主役でした。

実は何作にもわたっているテーマの一つに、サイコパスという心理的な類型がある。共感能力が著しく低く、それがために残虐なこと、恐ろしいこともできてしまう人物がいる。一つの類型が『黒い家』の菰田幸子。サイコパスも殺人者に限定すると犯行状態から無秩序型と秩序型に分かれる。無秩序型の菰田に対し秩序型が蓮実聖司だ。ある意味、対をなしている作品だといえる。

──文章のぜい肉を落とす快感を知ろうとも言っています。

一度書くとだいたい切りたがらない。しかし、思い切って切るとダイエットや断捨離と同様に、後生大事にためていたのを捨ててしまえばすっきりする。そういう感覚も文章書きにはある。

──書き手が増えるといい作品も増える?

今年は豊作の年。この10月に本が出る『ぼぎわんが、来る』の澤村伊智、『二階の王』の名梁和泉は力量豊富だ。

塚田 紀史 東洋経済 記者

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つかだ のりふみ / Norifumi Tsukada

電気機器、金属製品などの業界を担当

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