すべてをコントロールしようとし、最適化や効率化を求める現代人は、なぜ不安や絶望感に苦しんでいるのか

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

「お金が足りないのは、思考の仕方が悪く、お金が入ってくるのを妨げているからにすぎない」とバーンは断言する。

ポジティブ思考(X)が富(Y)を生む。いつも悲観的な考えを持ったり否定的な態度を取ったりしてばかりいる大勢の貧しい人全員に、バーンの本を手に入れる余裕がありさえすればいいのだが!

その本が手に入れば、驚くべき教訓が得られるだろう。たとえば、「思いは磁石のような力のあるシグナルを発しており、その思いに相等するものをあなたのもとに引き寄せているのだ」といった考え方に出合える(磁石は同じ極ではなく反対の極を引き寄せるはずなのだが、そんなことは忘れておこう)。

2世紀前に奴隷にされた人々は、奴隷にされていない自分の姿を想像しさえすればよかったのに、そうしなかったのだから、なんと不幸なことだろう! 彼らを拘束していた鎖は、頭に思い描いた足枷(あしかせ)にほかならなかった。

バーンによれば、恐ろしい不運に見舞われた人々は自分を責めるしかない、ということになる。

それは馬鹿げている。

何から何までコントロールする必要はない

時空に隔てられて遠く離れた無数の決定や偶然の出来事が、幸せなものもそうでないものも含めて、けっして予期できなかったかたちで合わさり、私たちの人生はそれによって変わる。

私たちは、自分が本当は何者かを受け容れれば安心できるかもしれない。私たちは宇宙の中の偶然の巡り合わせであり、ネットワーク化され、意識が宿った原子の群れであり、不確実性の海を漂っているのだ。

何から何までコントロールする必要はない。それでかまわないのだ。

(翻訳:柴田裕之)

ブライアン・クラース ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン准教授

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

Brian Klaas

ミネソタ州で生まれ育ち、オックスフォード大学で博士号を取得。現在はユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンの国際政治学の准教授。『アトランティック』誌の寄稿者で、『ワシントン・ポスト』紙の元ウィークリー・コラムニスト。受賞歴のあるポッドキャストPower Corruptsのホストを務めている。著書に『なぜ悪人が上に立つのか』がある。個人のホームページはBrianPKlaas.com、Xのアカウントは@BrianKlaas。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事