人間や物事の関係は目的を達成するための手段になり、驚異的なまでにネットワーク化されたこの世界のあり方を、たんなる「ネットワーク作り」に矮小化してしまう。
元修道女で著述家のカレン・アームストロングは、この不安について語り、次のように述べている。
人は博物館を訪れると、世界史上重要な品々を間近で眺める経験にただ浸ることはなく、スマートフォンで写真を撮っては先に進み、「何かしらのかたちで所有」しようとする。「バーチャルなコピーを手に入れるまでは、実在するものにはならないかのようだ」。
だが、コントロールしたいという強い願望は見当違いだ、とローザは主張する。それは、「私たちは制御不可能なものに出合って初めて、本当の意味で世界を経験する。そのときようやく、私たちは胸を打たれ、感動し、生きていることを実感する」からだ。
ベストセラー自己啓発書の噓
人生の節目で迎える計画どおりの祝い事でも、計画していなかった突発的な出来事が最もよく記憶に残る。
それにもかかわらず私たちは、自己啓発書をあと1冊読むだけで本当に物事をコントロールする力が手に入る、と説く宣伝屋たちの嘘を鵜呑(うの)みにする。
彼らは、次のように言い切る。童話版の現実は本物であるばかりか、あなたこそがその物語の主役なのだ。あなただけが筋書きを決められる。ポジティブ思考の魔法の泉を活用しさえすれば、と。
たとえば、ロンダ・バーンの『ザ・シークレット』を考えてみよう。この本はこれまで3000万部ほど売れ、50を超える言語に翻訳された。
バーンの主張によれば、財産が少ない、貧しい、といった不運は心の状態を示しており、本人が啓発された思考をするようになれば、たちまち克服できるという。
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