震災から何を学んだか--食の安全と放射能

福島県内では学校給食の現場でも、地元食材の使用をめぐって問題が生じている。福島県中通り地方の小学校で学校給食の発注業務に携わる教員は、「地元の農家には申し訳ないと思いつつ、放射能汚染のリスクがある地元産の果物の購入を手控えている。震災前までの地産地消の取り組みは完全に行き詰まってしまった」と話す。

須賀川市では小中学校に子どもを通わせている保護者からの「安全な食材を」との要請を踏まえ、昨年12月から学校給食で使用するコメを地元産米から会津産米に変更した。福島市ではコメの調達先である県学校給食会が方針を切り替えたことに伴い、学校給食でのコメの産地が福島市内から会津地方に変更された。

放射能汚染が比較的少ないことから、会津若松市内では給食をやめて弁当に切り替える児童はごく少数だという。だが、「食材の産地に関する情報開示が十分でない」と考える、小学6年生の息子を持つ母親は、昨年9月の新学期から弁当を持参させるようになった。

一方、学校給食で地元産米の使用方針を継続しているのが郡山市だ。同市では1キログラム当たり10ベクレルを超えた食材は給食で使用しないことを前提に食材を選定。コメについても、「10ベクレルで線引きしたうえ、農協および給食センターでの二重の検査によって、安全性を確保している」(郡山市教育委員会)という。

だが、保護者からは地元産米の使用を不安視する声が上がっている。郡山市が原発事故後に採れた新米の使用を開始したのは昨年11月8日。その直後に福島市や伊達市などで暫定規制値を上回るコメの放射能汚染が発覚したが、郡山市では県による再調査が続くさなかも地元産の新米の使用を続けた。一方で、給食に不安を抱く市民の声は退けられた。

「学校給食について、保護者などに対面形式での説明や質疑応答の機会を定期的に設けること」

郡山市議会に小中学校の学校給食に関する請願が提出されたのは昨年12月16日。ところが、与党などの反対多数(賛成10、反対29)により請願は否決された。

地元産米をめぐり不可解な動きが起きたのは今年1月に入ってからだった。学校給食で使用する地元産の新米(ひとめぼれ)について、昨年度より1キログラム当たり15円高い価格で学校が購入することで市教育委員会が郡山市農協と合意していたことが市民による情報公開請求で判明した。市教育委員会作成の文書によれば、各小中学校長宛てに出された購入条件に関する通知の日付は1月24日。それから1週間も経たないうちにJA全農が福島県産のひとめぼれの販売価格を60キログラム当たり500円下げたことを明らかにした。

この問題は3月2日の市議会でも取り上げられたが、「(購入価格は)予算範囲内に収まっている」などとして市側は「問題なし」との見解を表明。学校給食が販売不振に陥っている地元産米の受け皿になっている実態が浮き彫りになっている。

さらに郡山市では、地元産米の販売テコ入れを狙って農林部内に「郡山市米消費拡大推進協議会」を設置。「あさか舞プレゼントキャンペーン」と題した地元産米の販促キャンペーンを組織を挙げて推進するなど、県内では際立って地元農産物の消費拡大に力を入れている。

市民の不安が企業を動かす

「牛乳の放射性物質にかかわる検査結果について適切に公表し、関係者に適切な説明を行うよう、貴会会員への周知をよろしくお願いします」。厚生労働省が日本乳業協会などの業界団体に牛乳に含まれる放射性物質の自主検査および公表を求める通知を出したのは昨年12月27日。この動きには伏線があった。

東京・世田谷区が実施してきた学校給食の牛乳を対象とした放射性物質の検査で、12月に定量下限値を1ベクレル/キログラムに引き下げたことをきっかけに学校給食の牛乳から6・3ベクレルの放射性セシウムが検出された。その直前の11月29日にも、当時の定量下限値(20ベクレル)以下ながら6・8ベクレルのセシウムを検出していた。こうした事態を踏まえ、保坂展人世田谷区長は東京23区の区長会で厚労相宛てに業界への指導を申し入れることを提案。それが発端となって厚労省による業界への指導が行われた。

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