ドコモが住信SBIネット銀行を2336億円でTOB。NTTがSBIに1100億円出資する複雑な資本業務提携の狙いとは

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複雑な利害調整もあった。ドコモは2023年10月にマネックス証券を連結子会社化している。一方、住信SBIネット銀行の成長を支えてきたのは、グループ会社であるSBI証券との銀証連携だ。

「公平かつ公正に両者を扱って、顧客中心主義に基づいて顧客の利益を損なわないようにするということで双方合意ができた」(北尾氏)

住信SBIネット銀行の円山社長も「この提携が既存のパートナーや顧客や事業に影響を与えてはいけない。SBIホールディングスとの提携関係は基本的に維持」と明言。最終的にドコモが持株比率65.81%で連結子会社化するが、議決権比率は三井住友信託銀行と50%ずつ。実質的な共同支配という微妙なバランスとなった。

ドコモ
ドコモによる買収後も三井住友信託銀行との共同経営体制は維持する(筆者撮影)

今後の展開と課題

住信SBIネット銀行の買収により、ドコモは単なる銀行機能以上の「武器」を手に入れた。AI与信技術、BaaS事業のノウハウ、約10兆円の預金基盤。だが新たな課題も浮上する。

特に重要なのがBaaS事業の中立性だ。住信SBIネット銀行は現在も「V NEOBank」(三井住友カードとの提携)など、他社の経済圏に銀行機能を提供している。ドコモ傘下になった後も、競合他社へのBaaS提供を中立的に続けられるのか。

円山社長は「必要なところには(dポイントなどドコモのサービスを)導入するが、無理に押し付けることはない」と明言したが、実際の運用はどうなるか。ドコモの法人ネットワークを活用してBaaS事業を拡大する一方で、既存の提携先との関係を維持する。この微妙なバランスが、住信SBIネット銀行の今後の成長を左右する。

BaaSサービス
BaaSサービスの中立性を維持できるのかは1つの焦点だ(筆者撮影)

5月30日から始まる公開買い付けを経て、2025年11月頃には一連の手続きが完了する予定だ。SBIは売却で得た資金を新生銀行の公的資金2300億円の返済と新たなメディア事業への投資に充てる。一方でNTTから8.18%の出資を受け入れ、売却後も両社の関係は続く。ドコモがようやく手に入れた銀行——だがそれは単なる「追いつき」ではなかった。

石井 徹 モバイル・ITライター

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いしい とおる / Toru Ishii

1990年生まれ。神奈川県出身。専修大学法学部卒業。携帯電話専門媒体で記者としてのキャリアをスタート。フリーランス転身後、スマートフォン、AI、自動運転など最新テクノロジーの動向を幅広く取材している。Xアカウント:@ishiit_aroka

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