ドコモが住信SBIネット銀行を2336億円でTOB。NTTがSBIに1100億円出資する複雑な資本業務提携の狙いとは
1つは、SBI新生銀行が抱える公的資金の返済だ。新生銀行の前身は1998年に破綻した旧日本長期信用銀行。政府が注入した公的資金約3700億円のうち、2025年3月に1000億円を返済したものの、まだ2300億円が残っている。北尾氏は「国民からの血税の借金」「本年度中に必ずやる」と力を込めた。この公的資金の完済は、SBIグループの最重要課題だ。
もう1つは、5月19日に設立した「SBIネオメディアホールディングス」を通じたメディア事業への大型投資。記者から質問を受けた北尾氏は「2つほどM&A案件があると申し上げましたけど、この分野(メディア事業)です」と明かした。
興味深いのは、北尾氏がイーロン・マスクのXを引き合いに出したことだ。「アメリカを見ていると、ITとメディアと金融が一体化する」「特に刺激を受けたのはイーロン・マスク」。グローバルプラットフォーマーの動向を強く意識していることがうかがえる。
SBIは1000億円規模のコンテンツファンドも設立。住信SBIネット銀行の売却益とNTTからの出資金は、過去の清算(公的資金返済)と未来への投資(メディア事業)という2つの重要課題を同時に解決する原資となる。

「売って売らない」買収+出資スキーム
では、なぜ単純な売却ではなく、NTTからの出資を含む複雑なスキームになったのか。
「うち(SBI)のほうはどうなのかと言うと、単にその売ってしまう、縁が切れるなら困るというのが銀行の役職員の気持ちだった」
北尾氏の言葉には実感がこもっていた。SBIから住信SBIネット銀行に出向・派遣されている社員は多い。技術面でもSBIグループが支えてきた。彼らの思いを考慮した北尾氏は、ドコモ側に提案をした。
「私どものホールディングスの株をいくらかNTTさんに持っていただいて、そのうえで一体感をずっと持ち続け、業績の継続的な向上に寄与すること。それがやっぱり売り主としての責任だろう」
結果、NTTは第三者割当増資により2700万株(約1100億円)を引き受け、SBIホールディングスの8.18%を保有することになった。
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